「骨盤を矯正する」と耳にしますが、胸郭を矯正するとはあまり聞かれないと思います。
そもそも「胸郭」と言う言葉もあまり耳にしないかもしれません。
胸郭とは、肋骨まわりのことで、肺や心臓などの胸の臓器や胃や肝臓、腎臓などのおなかの臓器を囲んで、それらの臓器を守っています。
肋骨は、胸椎という背骨の骨とつながっており、左右12本ずつの計24本あります。
胸郭(前)
胸郭(後)
骨の数が多いということは、その分、関節の数も多いということになります。
それに対して、骨盤には、3つの関節(仙腸関節、股関節、恥骨結合)と関節の数も少ないので、外からアプローチしやすいのです。
そして、骨盤の関節のなかでも仙腸関節という関節は、関節の動く範囲が小さく関節が引っかかりを起こしやすい関節でもあります。
仙腸関節に引っかかりが生じた場合には、仙腸関節に力を加え関節の引っ掛かりを解消する手技が有効となります。それが骨盤矯正と呼ばれる手技です。
しかし、胸郭の場合、肋骨の関節にはアプローチすることができても胸郭全体の歪みを改善することは困難です。
なぜならば、外から骨格を矯正する場合、胸郭のように関節の数の多い箇所は関節の歪みを細かく見ていかなければならないからです。
なので、全体的に矯正するのが難しいのです。
骨盤の矯正は、何かのはずみで関節の位置が狂った場合の関節のひっかかりにはとても有効ですが、慢性的な体の歪みが原因の関節のひっかかりには功を奏しません。
それは、慢性的な体の歪みの原因となるのが、骨と骨とをつなぐ筋肉の張りのバランスが悪くなることによるものだからです。
筋肉の張りのバランスが悪ければ、外から骨の位置を整えたとしても、突っ張った側の筋肉に引っ張られて、骨格が元の歪みの位置に戻ってしまいます。
特に胸郭は、骨の数が多いため筋肉の張りのバランスの影響を受けやすいのです。
そうしたら、胸郭の歪みを改善することはできないのでは?と思われるかもしれません。
そして、慢性的な骨盤の歪みも胸郭の歪みが原因の一つとなっているのです。
胸郭の歪みを作る大きな原因となるのが、腹斜筋というおなかの脇腹の筋肉です。
この腹斜筋は肋骨と骨盤をつなぐ筋肉で、ウエストを捻じる働きをする筋肉です。
左右の腹斜筋の張りのバランスが悪くなると、胸郭と骨盤の位置がずれて、そのことが胸郭歪みと骨盤の歪みとなります。
体幹部の歪みは、胸郭の歪みと骨盤の歪みが連動して起こります。
このことから、左右の腹斜筋の張りのバランスを整えることができれば、胸郭の歪みと共に骨盤の歪みも大きく改善することができます。
しかも、それらの歪みは簡単な動きを行うだけで改善することができるのです。
逆に、自分で動かさなければ改善することができません。
その方法が、脱力調整法「大田式調整動作®」です。
※「調整動作」とは、筋肉の「伸びたら縮む」「縮めば緩む」という性質を利用して、骨と骨とをつなぐ筋肉の張りのバランスを整えることによって、骨格の位置を整え、重力に押し潰されないようにするために考案した身体のセルフ調整法です。
セルフ調整によって体のバランスが整えられると、体が軽く感じることができます。
なぜかと言いますと、重力に押し潰されなくなることで、骨にある重力に抗する力(垂直抗力)を支えるようになるためです。
このことによって、骨で体を支えることができるようになり、背骨の後ろを通る脊髄(神経の束)の圧迫がなくなるので、脳と末梢をつなぐ神経の流れも良くなります。
結果として、身体の機能を高めることができるようになるという効果も表れます。
- 体の歪みを取ること。
- 身体の機能を高めること。
それらは、異なることだと思われるかもしれません。
しかし、それらのことは両輪の関係なのです。