よくゴルフや野球などのスポーツでは、「腰を回してスイングしましょう!」といわれています。
しかし、ゴルフのクラブなどをスイングする時、実は腰は回っていないのです。
けれど、腰を回わすと言います。
腰というと、ウエストの後ろという認識が一般的だと思います。
ですが、腰椎と言う腰の骨は、ほとんど回らないような構造になっており、回旋する範囲は5度ぐらいです。
スポーツの経験のない方などが、なかなか上達できないのは、腰を回すことの意味を理解していないためです。
そのような方々は、ウエストを回そうとしているのです。
ウエストを軸に腰を回そうとすると、体の中で一番力を出すことのできる脚の筋力を活用できないため、力をこめてスイングしたとしてもうまく飛ばすことができず、そればかりか腰を痛めてしまう恐れがあります。
これは、どのような意味なのか?
腰を回すスイングの正体は、股関節を軸に骨盤が動く運動だったのです。
その点を踏まえずにレッスンを受けても、上達することは難しいでしょう。
この問題は、腰の位置に対する認識の違いから来ていると思います。
人体の構造に従って股関節を軸に骨盤を回旋されることができれば、おしりや脚の筋肉を上手に使うことができるため、力をこめなくても楽にボールが飛んで、腰も痛くなりません。
このように、大きな力を出そうとする時の腰の意識は骨盤にあるのです。
ここで、私が指圧の治療を始めた頃の話をしたいと思います。
ちょうど80代ぐらいの患者さんの治療をしていた時です。
「どこが痛いですか?」
と聞くと
「腰が痛い」
と言うので
「腰はどのあたりが痛みますか」
と聞き返すとなんとお尻のあたりを指したのです。
腰はウエストの後ろと認識していた私は、そのことに大変驚いたことを覚えています。
初めは「この人だけなのかな?」と思っていましたが、大正生まれのほとんどの方が腰というとお尻をさしたのです。
大正生まれの世代の方々の腰の意識は骨盤にあることがわかりました。
それが、時代が下り、昭和生まれに人の腰の意識は、ウエストの後ろになるのが不思議です。
おそらく、昔は手や道具を使って行なう作業が多く、人力を使う機会が多かったため、体を効率的に使うための意識が強くなったと考えられます。
そのために必要だったのが、骨盤周りの意識だったのです。
骨盤を中心に脚の筋力を利用することは、重労働を行うにあたって必要な意識です。
しかし、今現在は自動車や家電機器、パソコンなどが普及し、昔のように体を使う必要がなくなりました。
このことによって、体の意識を薄くなったのでしょう。
体の意識の違いが動作の質を大きく変えてしまいます。
そのことを、多くの方に知っていただきたいと思っております。