車やバイクで「アライメントを調整する」と言われますが、人の関節もアライメントを調整する必要があります。
アライメントとは、一直線上に並べるという意味で、関節がスムーズに動く位置に調整することを「アライメントを調整する」言います。
人の関節の中でもっともアライメントによる影響を受けやすいのが膝の関節です。
なぜならば、体重がかかる上、前と後ろへの一方向しか動かないからです。
ですので、動かせない方向に負荷がかかると関節にダメージを受けて関節が変形しやすくなります。
膝の関節のアライメントを調整することで、関節の変形を予防できると考えられます。
膝のアライメントを調整するためには、膝の関節自体の位置ではなく、腰と脚とをつなぐ大腰筋と腸骨筋の張りのバランスを整える必要があります。
このとき、
- O脚場合は腸骨筋
- X脚の場合は大腰筋
の張りが強くなると考えられます。
大腰筋と腸骨筋は、解剖学では大腿骨の小転子(脚の付け根)に付いて股関節を屈曲(腿を上げる)させる働きが共通しているので総じて腸腰筋と呼ばれています。
これは私の仮説ですが、歩行時、大腰筋と腸骨筋の働きが異なり、腸骨筋は遊脚時(腿を持ち上げる時)に使われ、大腰筋は立脚時(足を地面につけている時)に腰椎を側湾させて体幹部のバランスを取る働きがあると考えられます。
そのように考えますと、
- O脚の人は、腸骨筋の緊張が強く股関節を伸展(脚を後ろに伸ばす)しずらい傾向
- X脚の人は大腰筋の緊張が強く股関節を屈曲(脚を挙げる)しずらい傾向
にあると考えられます。
このため、
- 骨盤が後傾している人にO脚
- 骨盤が前傾している人にX脚
の傾向が多いように思います。
O脚は腸骨筋によって大腿骨が股関節より外側に引っ張られることによって起こります。
それは、腸骨筋は小転子より外側にある腸骨(骨盤)に付いているからです。
O脚がひどくなりアライメントの狂いが大きくなると膝関節の内側の半月板に負担がかかります。
それに対してX脚は、大腿骨が股関節より内側に引っ張られることによって起こります。
それは、大腰筋は小転子より内側の腰椎(腰の骨)に付いているからです。
X脚がひどくなりアライメントが狂いが大きくなると膝関節の外側の半月板に負担がかかります。
アライメントが狂ったまま放置していると、膝の関節が変形し、そのことで組織が損傷して炎症が起き関節包内に水が溜まり、膝が脹れ強い痛みを伴います。
このようにして起こるのが変形性膝関節症、膝の変形なのです。
また、大腰筋と腸骨筋の張りのバランスが崩れてくると、膝関節のまわりの筋肉の張りのバランスも崩れてきます。
それは、ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が弱くなり、ももの後ろの筋肉(ハムストリングス)の張りが強くなるためです。
このことによって、膝の変形が助長させてしまいます。
ですので、変形性膝関節の治療の一環で大腿四頭筋の筋力トレーニングを行うことが必要となるのです。
しかし、膝関節のアライメントの崩れは腰と脚をつなぐ腸腰筋の張りのバランスだとすれば、腸腰筋の張りのバランスを整えることが膝の関節を守る唯一の方法です。
一度関節が変形していまったら、二度とは戻りません。
また、人体の関節以上に優れた人工関節を作ることは、現在の技術を持ってしても作ることができないのです。
与えられた優れた関節を長く使っていくことは、自分自身で守っていくしか方法がありません。
超高齢化社会となった現在、医療や福祉の制度もほころびが見え始めています。
なので、自身の身体の守るためにもセルフメンテナンスの方法を知ることが必要な時代が訪れています。
身体の構造に従った関節に負担をかけない!超高齢化社会を見据える必要があると思うのです。