重力と歩行

体を垂直に立てて二本足で歩くという動作は人間にしかできません。


しかし、その動作を行うために必要なエネルギーを作り出しているのは筋肉ではありません。


もちろん、筋肉がなければ歩くことはもちろん、体を動かすことすらできません。


ですが、いったん立ってしまえば筋肉によるエネルギーを多く使わなくても立ち続けることが可能です。

そして、体を傾けることで自然と倒れますので、その倒れるエネルギー(重力)を利用することで前に進むことができます。

 

※実際には、左図のようには大きく傾きません。

 

もちろん、そのまま倒れてしまったら前には進みませんので、足を前に出して体勢を立て直す必要があり、この時に筋肉の力が必要となります。

【関連記事】荷重と抜重について(垂直抗力・床反力)


 

 

歩行という運動は、体を支えることによって生じている位置エネルギーを体が倒れることによって生じる運動エネルギーに転換し、体が倒れてないように筋肉のエネルギーを使って体を起こして失った位置エネルギーを回復させ、また体が倒れることで運動エネルギーに変えるというサイクルを繰り返すのが歩行という運動です。

 

ですので、歩行という動作では体を前に倒すために筋力を使われません。


このことを可能にしているのが、頭の重量です。

成人の頭の重量は、約4~5kgといわれ、全体重のおおよそ一割を占めます。

 

このように、重いパーツである頭が体の一番てっぺんにあるのは、構造的に不安定に思うかもしれません。


その不安定さを活用しているのが歩行という運動なのです。


この歩行という運動は、エネルギー的には少なくていいのですが、それを制御する働きがとても複雑です。


その働きを統括しているのが脳と神経のネットワークですが、その働きを実行しているは脚ではなく背骨なのです。


背骨が波状に動くことで姿勢をコントロールし、体のバランスを取ることで歩くことができます。


なので、加齢などが原因で背骨の動きが悪くなってしまいますと足の運びが悪くなります。

 

これは、背骨の動きが悪くなることで、重力によるエネルギーを利用することができなくなるからです。

  • 重力の力を利用する

ということは、

  • 自然の理に則って動くこと。

このことこそが、人が生きていくうえで、とっても大切なことです。

 

大田式調整動作では、重力を利用する脱力トレーニングを行っております。