息を吸う時におなかを膨らませ、息を出す時におなかを凹ませる腹式呼吸が常識になっています。
なので、息を吸ったらおなかがふくらむのでは?思われるかもしれません。
ですが、世の中には様々な呼吸法があります。
ですが、呼吸法は大きく
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腹式呼吸
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逆腹式呼吸
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胸式呼吸
の3つに分類されます。
逆腹式呼吸とは、息を吸う時におなか(下腹部)が凹み、息を出す時におなかが膨らむ(もどる)呼吸です。
腹式呼吸とはおなかの動きが逆になるため、特殊なように思うかもしれません。
ですが、腕を挙げて息を吸い込むとおなかが凹みます。
これが、逆腹式呼吸のかたちです。
これは、胸郭(肋骨)が広がると自然に下腹部が凹むようになっているためです。
実は腹式呼吸でも深く息を吸う時には下腹部が凹むのです。
え?と思われる方もいるかもしれません。
結論から言うと、おなかがふくらんむ様に見えるだけです。
腹式呼吸を行う時に、おなかがふくらんで見えるのは、おなかの後ろにある腰椎(腰の骨)の前弯が強くなるからです。
逆に、逆腹式呼吸では腰椎が後弯気味になるためおなかが凹むように見えます。
腹式、逆腹式の動きを決めているのは、呼吸の仕方ではなく、体型の違いなのです。
ここからは、呼吸のメカニズムです。
呼吸の運動を行なう横隔膜は、膜と書きますが骨格筋の一種です。
骨格筋とは、骨と骨とをつなぎ骨を動かすための筋肉で、自分の意思で動かすことができる筋肉でもあります。
それに対して、内臓の働きを調整する筋肉が平滑筋で、自律神経の支配下にあり、自分の意思で動かすことはできません。
あと、心臓の筋肉、心筋も自律神経の支配下にあり自分の意思で動かすことのできない筋肉ですが、平滑筋とは異なり骨格筋の構造に似ています。
基本的に、平滑筋と心筋は自律神経の支配下にあり、骨格筋は中枢神経の支配下にあり自分の意思で動かすための筋肉です。
骨格筋の中でも横隔膜は特殊で、普段は自律神経の支配下にありますが、呼吸を意識すると中枢神経の支配となり自身でコントロールすることができるという性質があります。
横隔膜も骨格筋ですので、骨に着いているので骨を動かすための筋肉です。
横隔膜は、胸郭と腹腔とを隔てるようにドーム状になっていて一番下の肋骨と第1腰椎とに着いています。
ですので、横隔膜が収縮すると肋骨下部が腰椎に引っ張られて腹腔の方へ押し下げられるようになります。
このことで、肺の空気圧が下がり、それに伴い胸郭が広がり息が吸われるようになっています。
さらに深い呼吸を行なおうとした時に、骨盤も連動して動きます。
息を吸う時に、横隔膜が下降することで腹腔内の内臓がおなかのほうに押し下げられます。
そのまま押し下げられるとおなかのほうに流れてしまい、そうなると姿勢が崩れて胸郭が広がりにくくなるため深い呼吸ができなくなります。
そこで、腹横筋という腹筋のインナーマッスルが姿勢をキープしようと働きます。
そうして骨盤が締まり、その結果下腹部が凹みます。
このように、呼吸という運動は骨が動くことで行われているのです。
ですので、一般的に認識されているようにおなかを膨らませるとか凹ませて呼吸をしているのではありません。
横隔膜が下降することで内臓が押し下げられるので、ある程度おなか(特に上腹部)は膨らみます。
ですが、おなかを膨らませることが呼吸の本質ではありません。
呼吸とは、横隔膜の収縮による胸郭と腰椎、骨盤の骨格運動なのです。
息を吸う時に横隔膜が収縮し、息を出す時に横隔膜が弛緩する。
それに伴って、胸郭、腰椎、骨盤が連動して動く。
これが、骨格構造に基づいた呼吸運動のメカニズムです。