「弱い力で治療を行う」という方法をよく耳にします。
今は治療を行っていないので治療について語る資格もありませんが、ここでは治療自体というよりも弱い力という観点で書いていきたいと思います。
マッサージや整体(骨格矯正)などを行う人の中には必要以上に力を入れるケースが多く、また施術に慣れた人は強い刺激を求めがる傾向にあります。
しかし、強刺激のマッサージには身体に対して悪影響があります。
強い刺激が加わると筋肉の防衛反応(侵害刺激反射)が働き、筋肉がだんだん固くなり柔軟性が失われます。
柔軟性がなくなった筋肉は伸縮性がなくなるため血行が悪くなります。
なので、強いマッサージを受ければ受けるほど肩こりなどの症状が強くなるという悪循環に陥ってしまいます。
ただ、ヒーリングなどとは異なり、マッサージは物理的刺激を与えることが前提です。
ですので、物理的刺激は必要なのですが、問題は刺激の与え方です。
体の内側にある深層筋にアプローチするためには、どのようにすればいいと思いますか?
おそらく強い力を与えなければいけないと思うかもしれません。
実際は、その逆で弱い力を与えることが必要なのです。
例えば、料理をする時、中まで火を通したいと思い強火で料理すると表面だけがこげて中まで火が通りません。
ですが、弱火でじっくりと焼くと表面がこげずにしっかりと中まで火が通ります。
このことと同じで、強い力は表面の筋肉にダメージを与えるだけで、アプローチしたい深部の筋肉にアプローチできないのです。
しかし、弱ければいいわけではなく、弱くても力が浸透しなければ意味がありません。
そこで、力を浸透させる技術が必要となります。
ただ、既存のマッサージや骨格矯正の技法では、どうしても力が強くなります。
その理由は、体重を乗せて力を加えるためです。
そうなると、上から下へ働く重力の力に支配されてしまいます。
その結果、自身の体重を支えるために肩や腕の関節がロックされてしまい、力をコントロールすることが困難になります。
強い力は破壊する力ですので、筋肉はその進入を許しません。
なので、強くマッサージをすればするほど筋肉が緊張し、深部に力を伝えることが不可能になります。
では、どのようにすれば効率よく力を伝えることができるのでしょう?
そのためには、上から下の力でなく、下から上へ働く垂直抗力の力を利用する必要があります。
これが、脱力動作なのです。
垂直抗力を利用するためには、「骨を中心に体を動かす」という考えが必要となります。
筋肉の力を「骨を動かす」ためだけに使う。
このことを心がけるだけで、脱力動作を行えるようになります。
垂直抗力を利用することで、体重をかけずに済むため、関節がロックされることなく自在に動かすことができます。
このように力を加えると、弱い力を体の深部に徹すことができるようになります。
弱い力なので、筋肉の抵抗を受けることなく深部に力が伝えることが容易になります。
深部に体の力を徹すために必要となるのが、骨格の構造を把握することです。
そして、骨を道具のようにコントロールするという意識が必要となります。
そうすれば、効率よく骨を動かすことができるようになります。
既存のマッサージや整体などでは、上から下の力(体重)を利用するため強い力しか出すことができません。
それに対して、深部に徹す力は下から上の力(垂直抗力)を利用します。
そうすると、関節をロックさせるために筋力を利用しなくても良くなりますので、弱い力でもしっかりと深部に伝えることができるようになります。
重要なのは、できるかぎり弱い力を力を浸透させることなのです。