私が病院でリハビリの仕事をしていた時です。
その当時、ある新人さんの教育をしていました。
リハビリの方法やマッサージの方法など技術的なことのほかに、患者さんを車椅子に移す動作などの指導も行っていました。
その中で、教えるのに苦労したのが、車椅子への移動の方法でした。
その原因となったのが、体格差です。
私は体が小さいほうで、その新人さんは体が大きい人でした。
体が大きいほうが患者さんの移動は簡単なのでは?と思われるかもしれません。
しかし、そうではないのです。
体が大きいと体の重心が高くなります。
人の体は重い上に人によって重心の位置が大きく異なり、介助する人を持ち上げるには、自分の重心を介助する人の重心より低くする必要があります。
体が大きいと重心を下げにくいので、その分を筋力でカバーしなければいけません。
体の大きい人に腰痛が多いのは、そのためです。
私は、体が小さいので重心を下げるのに苦労はしません。
ですが、体の大きい新人さんは重心を下げようとすると膝に負担がかかってしまいます。
そこで、体の大きい人に対応した移動法を構築する必要がありました。
ですが、私の体を大きくできませんので、そのための良い方法を構築する術が浮かばなかったのです。
そのようなことを頭にとめながら、ある患者さんを車椅子に移動させていた時、あることに気がつきました。
私が車椅子から移動させる時に、車椅子とベットとの空間に方向を変えるポイントがあることに気がついたのです。
それまで、そのようなポイントのことなど気もつきませんでしたが、無意識のうちにそのポイントを軸に車椅子に移動させていたのでしょう。
「これで、うまくできるようになるのでは!」と思い、
さっそくそのことを新人さんにアドバイスしました。
「そのポイントに架空の軸をイメージしてもらいながら車椅子に移動してみてください。」
とアドバイスして行ってもらうと、
なんと!今までぎこちなかった動作がスムーズになった上、危なっかしかったのが安全に移せるようになったではありませんか!
新人さんが、
「とてもやりやすくなりました!」
と喜んでくれました。
内心「ほっと」しながらも、アドバイスした私が一番驚きました。
それが、空間意識(登録商標)を発見するきっかけになったのです。
空間意識を発見してから、新人教育の方法やリハビリの方法が一変しました。
それまでは、体の使い方を覚えてもらうように指導していたのが、空間意識を発見してからは、意識の向け方を変えるアドバイス法を用いるようになりました。
そのことで、体格に差があっても、筋力や柔軟性に差があっても、苦なくアドバイスを行えるようになったのです。
体格や力に差があっても、外にあるポイントは同じです。
このことが分かれば、動作の質を上げることは難しくありません。
これが、大田式調整動作®︎の提案する「空間意識®」を用いた脱力動作法なのです。