数年前、SNSである心理系(変性意識・催眠系)のサイトが流れてきました。
そうしたら「ホメオスタシス」という言葉を目にしたので
「ホメオスタシスというから、ストレスとかのことなのかな?」
と思ってクリックしてみたら、そうではなく、
「人が変化を嫌うのはホメオスタシスが働くから、変化を望まない」
というようなことが書かれていたのを見て、内心??となりました。
その時、思ったことは
「生体内のホメオスタシスがしっかり働くから、人は変化を求めることができるのでは?」という疑問でした。
そもそも、ホメオスタシスというのは、日本語では「恒常性」と言って、外の環境が変化しても、それに応じで自律神経や内分泌系が働くことで体内の環境を一定にする働きを表す生理学用語です。
例えば、外が暑い時には、自律神経の副交感神経が優位に働いて毛細血管が拡張することで体内にある熱を外に出そうとします。
そして、外が寒いときは、自律神経の交感神経が優位に働いて毛細血管を縮めることで体内の熱が逃げないように調節しています。
このように、体内の環境を一定にするように働くのがホメオスタシスです。
体の機能が正常に働いている時にはホメオスタシスがうまく働き、外の環境に適応する働きが強くなり行動がしやすくになります。
ですが、ホメオスタシスの働きが乱れると外の環境に適応できなくなり、それによって行動しにくくなります。
例えば、先ほどの体温調整の話ですが、冷え性の人は寒い日には外に出ようとしません。
なぜかと言いますと、冷え性の人は普段から体温が低く、寒い外の環境に適応するために体温を上げるためのホメオスタシスがうまく働らかないため体温が下がってしまい行動できなくなるからです。
ホメオスタシスがうまく働けば、体温を調節して寒冷という物理的ストレスにうまく対応することができるのです。
このように、
外からストレスがかかってもホメオスタシスの力が強ければ体内の環境がストレスにうまく対応することができますが、
ホメオスタシスが働かなければ外からのストレスに体内の環境がうまく対応できません。
ですので、ホメオスタシスがうまく働かないと「新しいことを行おう」と考えただけでも強いストレスがかかり、体内の環境がストレスにうまく対応できなくなり、変化を恐れやすくなるとも考えられます。
体内のホメオスタシスがうまく働いていれば、「新しいことを行う」というストレスが過度にかかる環境下でも環境に適応できるので、変化を恐れず実際の行動に移すことができます。
本来は、体外の環境の変化に対応するために、体内の環境を整えることがホメオスタシスの意味です。
ここで、ホメオスタシスという概念をはじめて提唱した書「からだの知恵」の一節を引用します。
からだの恒常性は、つねに変わる新しい条件にからだを適応させる働きから解放して、たんに生存をつづけるために必要な細々としたやりくりに絶えず注意を払う必要をなくした。
もしも、恒常性を維持する仕組みがなくなれば、普段は自動的に修正しているものを意識的に行うようにいつも注意していなければならず、さもなければ悲惨なことになる危険に絶えずされされている。
しかし、必要なからだの働きを安定に保ち、恒常性を維持する仕組みのあるおかげで、個人としてのわれわれは、そのような骨のおれる仕事から解放させる—われわれはからだについての不安に妨げれれることなく、自由に友だちと楽しくつき合い、美しいものを楽しみ、われわれの身の回りの世界の驚異を探求しそれを知り、新しい思想や興味を発展させ、働きそして遊ぶことができる。
「からだの知恵」W・B・キャノン著/舘ちかし ・舘澄江訳 引用
ホメオスタシスを提唱したキャノンも上記のように述べています。
ホメオスタシスが働くから変化を嫌うのではありません。
ホメオスタシスの働きが悪くなるから変化を嫌うのです。
ホメオスタシスという言葉の本質的な意味を理解されていないから「変化を恐れるのはホメオスタシスが働くからだと」いう誤用がされるのだと思います。
ホメオスタシスがうまく働くから外の環境に適応することができ、変化を恐れず行動することができる。
これが、体の機能に基づいて心の働きを理解する「心身相関」の考え方だと思うのです。