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「今ここに」というけれど

マインドフルネスが言われはじめた影響なのか「今ここに!」という言葉を耳にします。

 

その背景にあるのは、過去に囚われたり、見えない未来に不安を覚えがちな世の中だからなのかもしれません。


確かに、過ぎ去った過去や見えない未来にフォーカスするよりも今にフォーカスしたほうが現実的ではあります。


ですが、「今ここに」だけでいいのでしょうか?


「今ここに」だけにフォーカスしも、時間というものは常に「過去から未来へ」と不可逆的に流れています。


「今ここに」と言った時点で、すでに過去の出来事です。


人をはじめ動物は、行動を起こす時、一寸先の未来を予測しながら行動します。

 

そうしなければ、何の行動もできません。

 

なので、「今ここに」というのは一寸先の未来のことを指すと思うのです。


人間以外の動物には「過去に囚われる」ということは、ほとんどないでしょう。

 

ですが、一寸先の未来を予測するために、過去の経験も必要です。


一寸先の未来を予測する材料として過去の経験が生かしているのです。

 

本来、一寸先の未来を生きるために過去の経験を記憶するのですが、人間の場合、過剰に発達した大脳皮質によって過去の出来事をシュミレーションすることができます。


例えば、過去の出来事を鮮明にイメージ化して「あの時こうしていればよかったのに」とか「あの時あの場所にいなければ」といったように・・・。

 

この欲求こそが、「過去の出来事を変えたい」という自己実現の欲求で、過去に囚われるということは、人の持つ過剰に発達した大脳皮質のなせる業です。

 

これが、「後悔」なのだと思います。

 

人が「過去に囚われてしまう」のは、仕方がないのかもしれません。


ですが、人には頭の中で過去の出来事を鮮明にイメージ化する力があります。

 

ということは、人には「遠い未来をイメージ化してシュミレーションする能力」もあることでもあります。


その能力によって、道具を使い、高度な文明を築くことができたのでしょう。

 

ただ、遠い未来だけをシュミレーションするだけでは、ただの妄想になってしまいます。

 

そこで、シュミレーションした未来を実現するためには、過去の経験が必要となります。

 

未来の希望を実現するためには、過去の出来事や経験を生かしながら現実(一寸先の未来)を見つめることが必要なのです。

 

生きるということは、未来に向かって行動することです。

 

未来を見据えて今を生き、過去の経験を活かす。

 

そのためには、過去と未来と「今ここ」の現在、これらのバランスが整っていることが必要だと思います。

 

そうすれば、人の過剰に発達した大脳皮質の機能を十分に発揮されると考えます。

 

本当の幸せとは、過去を活かし未来に希望を抱いて今を生きることだと思うのです。