最近、若い歌い手さんの中に、めちゃくちゃうまいとは感じないんだけれど、なんか心に残る歌を歌う「へたウマ」の歌手を耳にするようになりました。
このような歌い手さんは、インターネットで動画を配信して、再生回数を増やしながら多くのファンを増やしメジャーデビューするらしいです。
このような歌い手さんは、おそらくボイストレーニングを受けたことがないでしょう。
ボイストレーニングで重要視されている腹式呼吸による歌唱法では「へたウマ」にはなれないからです。
このことに気が付いたのが、約7年(2012年)ぐらい前でした。
私が、声に関心を抱くようになり声の共鳴に気が付いた経緯ついて書きたいと思います。
歌に関心を抱くようになったきっかけ
私自身、20歳から呼吸法や脱力動作法を行うようになりました。
ですが、その当時、発声ついては全く関心がありませんでした。
なので、格段「歌うことが好き」という訳でもなかったのです。
その当時「カラオケボックス」が流行っていて、飲み会の2次会はカラオケが定番だった関係で行っていたぐらいです。
26歳の時にCMで流れていたクラッシックギターの音色に魅了されて「クラッシックギター」を習いにいくようになりました。
ただ、とても「クラッシックギターやっています」と人前で言えるよう様な腕前ではありませんでしたが。
ギターを習い始めてから、カラオケに行くのが嫌になってきました。
ギターを弾くことで音感が身に付いたからなのか?
自分の下手さ加減、特に高音域が出せない、もどかしさを感じるようになったからなのか?
ギターを習い始めて数か月たった頃、ギターのレッスンで弾き語りの課題を出されるようなりました。
カラオケが嫌いになっていたので「クラッシックギターを習いに来たのに何で弾き語り?」と思ったものです。
ギターの奏法の中にアルペジオ(分散和音)という奏法があり、アルペジオに慣れるためだということでした。
最初は、内心、いやいやながら行っていましたが、不思議と伴奏しながら歌うのが楽しくなってきました。
課題曲は私の知らない世代(初期のフォークソング)の曲が多く、聞いたことのない曲がほとんどでしたが、そのような曲は譜面のメロディーを弾いて歌を覚えました。
そうするうちに、その当時、流行っていた曲の譜面を買って歌のメロディーを弾きながら歌を覚えるようになりました。
その当時、大ヒットした歌を練習していて、高い音域のパートを歌うことができませんでした。
そこまで音域の高い歌ではありませんが、その当時の私には歌えませんでした。
何度か練習していたある時、突然、今まで出せなかった高い音域が出せるようになったのです。
この日を境に、音域が一気に上がり、歌っても喉が痛くなくなった上に声の通りまで良くなり、高音ばかりではなく、中低音域の声のボリュームまで上がるようになりました。
「もしかしたらこの曲歌えるかも」
と思い歌ってみると
「歌える!歌える!歌える!」
すっかり歌うことの虜になりました。
遠くに住む友人と再会し、一緒にカラオケに行くと私の声の変わりように驚いていました。
そうして、「声」に関心を持つようになったのです。
「へたウマ」の歌手の存在を知る
以前から身体調整に関心があり、一念発起して、29歳の時に指圧師になるための東京にある指圧の専門学校に通い始めました。
東京に住み始めた(2000年前半)頃、路上で弾き語りをしている歌い手さんの歌を聴くのが好きで、代々木公園に弾き語りを聞きに行っていた時期がありました。(今は禁止になっているようですが)
弾き語りをいていた人と仲良くなって、一緒に歌っていたら、ある人に声をかけられました。
その人は、音楽業界の方で、ヒット曲の作詞とそのアーティストをデビューさせた実績の人だったそうで、音楽に疎い私でもその歌を知っていたぐらいです。
その当時は、アーティストのスカウトか何かを行っていたのか?詳細は良く知りませんが。
歌は好きでしたが、別に歌手になろうなんて思ってもいませんでしたが、なぜかその方に気に入られたのか、東京で弾き語りのあるところに連れて行ってもらったりしていました。
当時の私の出せるようになった高音域の声が「ミドルボイス」であることもその方から教えてもらいました。
その方と、あるギターの弾き語りをしている人の歌を聞いていました。
その歌い手さんは、とても歌が上手だったのですが、高音域をうまく出せなくて悩んでいるとのこと。
その当時(2000年の頃)、ヒットした歌手の多くは透き通る高音域とファルセット(裏声)を織り交ぜるような歌唱法が多かった影響なのか?高音域を出せるようになりたいと思っていたのでしょう。
歌を聞きながら、
「ああ、力が入っているな。だから高音域でなんだ」
と漠然と思いました。
今だったら、
「高音域を歌おうとする時に体を捻じていますよ。だから出ないですよ。体幹を伸ばすように心がければ(高音域も)楽に出せるようになりますよ。」
というアドバイスぐらいできますが。
その歌い手さんが
「私、ボイストレーニング受けているんです。」
と言うと、
一緒にいたその人がすかさず
「ボイトレはやめなさい。」
と答えてました。
そして、その歌い手さんと別れた後、
その人が私に
「ボイストレーニングやっている子って、スカウトされないんですよ。」
と教えてくれました。
「そうなんですね」
と私が言うと続けて、
「ボイトレやっている子って個性がなくなるのよね。逆にヘタうまの歌手ってとても貴重なんですよ。」
と言ったので
「ヘタうまっていうのは?」
と聞くと
「下手なんだけれど、不思議と味のある声で歌う歌手のことなんですよ。例えば、○○○の△△とか、□□□□とか」
と聞きながら、
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確かに△△さんとか、□□さんとか、確かに癖があってうまいとは思わないな!
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けれど、その人以外の人がその人の歌てもしっくりこないなな!
-
△△さん、□□□□さんでなければ出せない何かを醸し出しているなあ!
「このような歌手がヘタうま!なんだ」と思ったことを今でも覚えています。
腹式呼吸で失敗した経験
3年後に卒業し、国家資格「あん摩マッサージ指圧師」の免許を得ました。
指圧の専門学校で解剖学や生理学などの基礎医学を学び、呼吸についても勉強していたため、今までライフワークとして行っていた呼吸法を解剖学的に解釈しようという試みを行うようになりました。
そこで行うようになったのが腹式呼吸でした。
今になって思えば、これが大失敗の始まりだったのです。
加齢の関係も大きかったとは思いますが、30歳を過ぎたあたりから身体のパフォーマンスが落ち始めたのに気付きはじめました。
歌以外にもスポーツ、体調など様々ありましたが、
歌で言えば、
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今まで楽に出せていた音域が出なくなった
-
声のボリュームが落ちた
ことなどでした。
パフォーマンスを取り戻すために、試行錯誤を重ねて行きましたが、それとは裏腹にパフォーマンスはどんどん落ちてしまったのです。
特に、35歳の頃が一番ひどかったです。
そこで、疑ってかかったのが、盲信していた腹式呼吸でした。
これも何かの偶然だったのですが、呼吸法を行っていた時、今までできなかった逆腹式呼吸がふとできるようになりました。
実践してみると、今までより深い呼吸ができることに気が付いたのです。
数か月ぐらい続けていくうちに、出なくなっていた高音域がまた出せるようになりました。
しかし、腹式呼吸で大失敗をしていたため、逆腹式呼吸については慎重に検証しました。
検証を重ねた結果、逆腹式呼吸とは、胸郭(肋骨)が大きく広がった時に骨盤が締まる(下腹部が凹む)現象だったことが分かりました。
決して、特別な呼吸ではなかったのです。
私の腹式呼吸の失敗の原因は、意図的におなかを膨らませたり凹ませたりしていたことにあったことに気が付きました。
この当時、逆腹式呼吸を行って功を奏したわけは、腹式呼吸によって作られた体の歪みが、真逆のことを行うことで、結果的に調整されたことによるものでした。
腹式、逆腹式問わず、意図的におなかを凹ませようとか膨らませようとする呼吸法は、体の歪みを強くしてパフォーマンスを落としてしまうことを身をもって知りました。
実際に戦前、当時有名だった呼吸法の創始者が早逝しています。
もっとも晩年多忙を極めていたことも関係あるとは思いますが、当人の写真やお弟子さんの写真をネットで見る限り腹腔を圧迫する姿勢を取っていることが観察されます。
その方が推奨していたのが逆腹式呼吸だったのです。
私も、もし逆腹式呼吸で良い結果が出たからといって今も逆腹式呼吸を続けていたら、またパフォーマンスが落ちていたでしょう。
そればかりか、体調を崩してい大変なことになっていたかもしれません。
「へたウマ」の正体
まもなくして独自のセルフ調整法の構想を練りはじめました。
試行錯誤の上に構築されたのが、脱力調整法「大田式調整動作®」です。
「大田式調整動作®」を考案してからは、呼吸と声を分けて考えるようになりました。
そうして、私が若い頃から現在まで第一線で活躍している有名アーティストの声の出し方に関心を持ち始めてきました。
そのアーテストの声は、とても高い声を出すと定評があります。
ですが、同じように歌ってもなんか違うのです。
よくよく聞いていると「あれ以外と声低いかも」と思うようになりました。
このことに気が付いて、試しに声の出し方を検証し、似たように声を作ってみると
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楽に声を出せる上に
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ボリュームまで出て
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高音域でも芯のある太い声を出せる
ことができるではありませんか!
これを発見した時に、ふと「ずるい」と思ったのです。
一生懸命に力を振り絞って歌っているように見えて、実はとても楽に声を出している。
よくよく考えたら、何十年も第一声で活躍しているのですから当たり前なのかもしれませんが。
このアーテストの声の正体は「倍音」によるもので、身体の共鳴をうまく使ったものだったのです。
改めて、その他のアーティストの声を聞いてみると、このアーティスト以外にも「この人もこのシステム使っている」という人を何人か見つけることができました。
その中に、先ほどの△△さんとか、□□□□さんもいました。
このような歌い手さんが「ヘタうま」と呼ばれる部類の歌手だったのです。