腹横筋とは、4種類ある腹筋の中で一番深層にある筋肉です。
一般的に腹筋というと筋肉隆々の人のお腹が割れているのをイメージするかもしれません。
これは、腹直筋という筋肉で最も表層にある筋肉です。
そして、ウエストのくびれを出したいと思い一生懸命おなか捻ろうとする横腹の筋肉が外腹斜筋と内腹斜筋です。
これらの筋肉は、ウエストを捻ったり、上体を屈めたりする働きがあります。
また、腹直筋と外腹斜筋、内腹斜筋は表層にあるために意識しやすく、筋トレでも鍛えることができます。
それに対して、腹横筋は深層にあるため意識しずらいため、筋トレでは鍛えることはできま
せん。
筋トレで鍛えることのできる筋肉は、表層にある意識しやすい筋肉だけです。
なので、加齢と共に腹横筋が衰えてしまいます。
これが、ぽっこりおなかの原因になります。
腹横筋の働きは、普段ほとんど意識されませんがとても重要な働きを担っており、
- ウエストを引き締め、体幹を支える
- 深い呼吸を行う
- 内臓の働きを高める
- 代謝を上げ、食べ過ぎを抑える
- 動作の初動を早める
などの働きをします。
ウエストを引き締め、体幹を支える
4種類の腹筋のうち3つの筋肉(腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋)が収縮すると上体を屈めるように働きます。
腹直筋と外腹斜筋・内腹斜筋は骨盤と肋骨との間に着くため縮めば上体が前に倒れるからです。
それに対して、腹横筋が収縮するとウエストが引き締まるように働きます。
腹横筋の構造は、とても複雑で肋骨の後ろ(正確には第7肋骨から第12肋骨についている肋軟骨)と腰椎の後ろ(正確には胸腰靭帯)と骨盤の際(正確には腸骨稜内側唇)から始まり、白線と腹直筋との境目(正確には腹直筋鞘の前葉と後葉)に着いています。
大雑把にいうと腰からお腹を横に包むように着いている筋肉です。
なので、腹横筋が収縮するとウエストを中心に腹部が締まるように働きます。
これが、腹横筋のウエストを引き締める効果です。
また、腹横筋のおなかを横に包む構造がコルセットに似ていることから、腹横筋が収縮すると腹圧が上がりおなかが引き締まることで体幹部の支えが強くなることを意味しています。
呼吸が深くなる
三番目の深い呼吸が行われるという効果については、既存の考えと私の見解とでは異なります。
しかし、そのプロセスは大きく異なります。
既存の見解では、腹横筋が働くことで横隔膜が緩み肺の中の空気が押し上げられて息が吐かれるという見解です。
それに対して私の見解は、横隔膜の収縮と同時に腹横筋が収縮することで体幹部の支えを強くすることで肋骨が広がりやすくなり、息が吸われるという見解です。
簡単に言うと、
- 既存の見解では息を吐く時に腹横筋が使われ
- 私の見解では、息を吸う時に腹横筋が使われる
という違いです。
どちらであっても深い呼吸と関係が深いことは確かです。
もしくは、息を吸う時も抜く時も腹横筋が働くことも考えられます。
内臓の働きを高める
四番目の内臓の働きを高める効果については、腹横筋が腹腔を覆うように着いていることから腹横筋が伸縮することで腹部内臓に適度な刺激が与えられ、内臓の働きを活性化されるためです。
それであれば、腹横筋以外の腹筋が働いても内臓に刺激が与えられるのでは?と思われるかもしれません。
しかし、そうではありません。
腹横筋が働かなければ、内臓を活性化させることができないのです。
腹横筋が働くことで内臓が圧迫されずに済んでいるためです。
腹横筋以外の腹筋が過剰に働くと上体が前屈みの姿勢になります。
そうなると、腹部内臓が圧迫されてしまい、内臓の働きが悪くなります。
そのようにならないために腹横筋がしっかりと体幹部を支え、内臓が圧迫されることを防いでくれます。
なので、体を動かしても内臓に大きな負担をかけることがありません。
その一方で、腹横筋が働いていると呼吸や運動をした時に、内臓が圧迫されることなく中に入っている内臓に適度な刺激が与えられます。
このことで、内臓が活性化され、内臓の働きが高まります。
内臓の働きが高まると、副交感神経が強く働き、睡眠の質が上がり、身体の修復されやすくなります。
このことで、体の若返りが図られます。
代謝を上げ、食べ過ぎを抑える
腹横筋が鍛えられるとおなかが引き締まります。
このことで、おなかの中に入っている内臓も適度に刺激され、内臓の働きが良くなり、睡眠の質が上がります。
そうすると、その他の腹筋(腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋)と背筋が活発に働き、また体全体の筋肉がバランスよく活発に働き、体の基礎代謝が上がります。
睡眠の質が上がり、基礎代謝が上がると余分な脂肪が燃焼しやすくなり、太りにくい体質になります。
筋肉が使われると太りにくくなることは知られていますが、睡眠の質が上がると太りにくくなることはあまり知られていないかも知れません。
寝ている間は動かないから、太りやすくなるのでは?と勘違いをしている人もいるのかも知れませんが、そうではありません。
睡眠の質が上がると成長ホルモンが分泌されやすくなるのです。
成長ホルモンには、傷ついた組織の修復のほかに脂肪を燃焼させる働きがあります。
腹横筋を鍛えることで、太りにくくなるのは、おなかが引き締まることと基礎代謝が上がるためです。
あと、腹横筋が鍛えられると食べ過ぎを抑えてくれるようになります。
多くの人は「12時になったからご飯にしよう」とか「毎日3食食べなくては」という観念に囚われています。
このような時には、大抵、身体的には、あまりおなかも減っていない場合が多く、惰性で食べるような生活を送ってしまいがちです。
あと、若く代謝の高かった時と同じ量を食べて、消費しきれなかった栄養分が脂肪として溜められてしまいます。
特に、おなかはまわりに骨がなく、無防備状態なので脂肪がつきやすいとも言われています。
このようなおなかの人の腹横筋は、すっかり、たるんでいます。
そうなると、その他の腹筋も使われなくなるので、さらにたるみ、脂肪をつけてしまいます。
基礎代謝の落ちた体に、それ以上の栄養分が入ってくるのですから、太って当たり前です。
そして、たるんだ腹横筋のおかげで、食べ物が消費できなくても胃の中に入れられてしまうので、許容量以上に食べ物が入っていることに気が付きません。
ですが、腹横筋が引き締めれば、胃の中に入る許容量以上食べ物が入ると、そのことに気が付くようになります。
そうなれば、必要以上に食べ物をとろうとしなくなり、食欲をセーブできるようになります。
よく「体の声を聞いて食べよう」と言われますが、腹横筋が鍛えられると体の声が聞こえてくるようになります。
なので、腹横筋を鍛えると代謝が上がり、食べ過ぎを抑えて太りにくい体質へと変わります。
動作の初動を高める
腹横筋が働くと、その他の腹筋(腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋)と背筋が効果的に活発に働きます。
ですが、腹横筋が弱いとこれらの腹筋や背筋がうまく機能しなくなります。
ジムで、一生懸命、腹筋運動を行っているのに「おなかが凹まない」と嘆いている人も多いと思いますが、その理由も、腹横筋が弱いからです。
腹横筋が強ければ、腹筋運動をすればするほどおなかが引き締まります。
そればかりか、腹筋運動でなくても、荷物を運んだり、階段や坂を登るだけでもおなかが引き締まります。
逆に、腹横筋が弱ければ、いくら腹筋運動の回数を増やしてもおなかを引き締めることはできません。
悲しいけれど、これが、現実です。
このことは、他の筋トレなどでも同じです。
筋力UPを目的とした筋トレを行う場合、腹横筋が働いていることが必須になります。
筋力とは、単なる筋肉の力ではありません。
筋力とは、筋肉が骨を動かし、外の物体に力を伝える力のことです。
筋肉の力は、縮む方向、すなわち筋肉の中心に向かって力が伝わる、内向きの力です。
それでは、外の物体に力を加えることなどできません。
そこで、2つ以上の骨とをつなぐこと筋肉の内側に向かう縮む力を骨を動かす力に転換して、その力を外の物体に伝えることで、はじめて外へ力を伝えることができます。
なので、骨の位置(アライメント)が悪ければ、骨と骨とを繋ぐ関節の滑りが悪くなるため骨の動きが悪くなり、外へ伝える力も弱くなります。
一見して単一の筋肉を鍛えるトレーニングを行なっていたとしても、単一の筋肉だけが使われることはありません。
人が動作を行うためには、その間、体を支える必要があるからです。
そう、単一の筋肉を鍛えている時でも、体を支える筋肉は常に働いているのです。
この体を支える筋肉の働き次第で、筋力UPができるかできないかが決まってきます。
体を支える筋肉にはいくつもの筋肉があります。
その中心となるのが、腹横筋なのです。
腹横筋が弱かったら効果的な筋力UPが図れないのです。
その理由は、腹横筋が働くことで体幹が支えられ、背骨や肋骨や骨盤と言った四肢(手足)の動きの起点となる骨と関節が一番働きやすい位置をキープすることができるからです。
そう関節が、全身の関節が動かしやすい位置をキープしてくれているのが腹横筋だったのです。
このことから、腹横筋が弱ければ、いくら筋トレを頑張っても筋力を上げることができないということが言えます。
逆に、腹横筋が強ければ、筋力がUPしやすくなるということです。
この筋力が、そのまま動作の初動を早めることにつながるのです。
腹横筋を鍛える唯一の方法
残念なことに、腹横筋は、筋トレでは鍛えらることはできません。
腹横筋は、筋トレをやってとか、ダンスをやってとか、ジョギングをやってとか、といった具合なことで鍛えることはできないのです。
では、どのようにすればいいのか?
行うことは、簡単です。
その方法とは、常に体幹を伸ばし続けることです。
- 立っている時も
- 座っている時も
- 歩いている時も
- 仕事をしている時も
- 食事をする時も
- テレビを見ている時も
- スマホを見ている時も
- 部屋でくつろいでいる時も
常に、体幹を伸ばし続けることを意識し続ければ、腹横筋が働くようになり、しだいに腹横筋が鍛えられます。
ただ、このことは、とても困難なことでしょう。
常に、姿勢に気を使い、体幹を伸ばし続けなければいけないのですから。
はじめのうちは、どうしても、すぐに姿勢を崩してしまうでしょう。
そのうち、続けられなく、挫折するかも知れません。
若いうちは、体幹を伸ばし続けることは、少し気をつけていれば、それほど困難ではありません。
しかし、加齢と共に腹横筋が弱くなると体幹を伸ばし続けることが、だんだん困難になってきます。
そして、腹横筋の筋力を弱くしている原因が、体の歪みだったのです。
逆に、腹横筋を鍛えられると体の歪みも改善されるとも言えます。
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腹横筋など主要な体幹のインナーマッスルを鍛える
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