坂道を昇ったり降りたりするには、ちょっとしたコツがあります。
そのコツとは、つま先にあります。
つま先を外に回しながら登ると足を前に出しやすくなり、登りやすくなります。
逆に、坂を下るとき、特に急な坂の場合、勢いがついて足で踏ん張ってしまい、歩きにくくありませんか?
この時は、登る時とは逆につま先を内側に回しながら下るとブレーキがかかりやすくなり踏ん張りが利くようになります。
坂を登る時
坂を下るとき
このような、つま先の使い方はスポーツなどでも用いられています。
つま先を使う動作の応用例
つま先を外に回しながら行われるのが、
スケートやスキーのスケーティングとクラッシックバレーで足を上げる動作です。
これらの動作は、足を前に上げる動作です。
つま先を外に回す動作は、つま先を動かすのではなく股関節を外旋(外に回す)ことで行われます。
股関節を外旋させると、足を上げたときに大腿骨が腸骨に当たりません。
なので、足を大きく上げるためには股関節を外旋させる必要があるのはそのためです。
それに対して、股関節を内旋させると足を上げたときに大腿骨が腸骨に当たってしまい足を大きく上げることができません。
逆に、股関節の内旋の性質を利用したのが、スケートやスキーのストッピング、あと、球技などの投球、バットなどのスイングです。
ストッピングの場合、股関節の動きを制限することを利用してブレーキングを行います。
上級者の人は、ターンと同時に両足を二の字にそろえて止まりますが、初心者は、片足だけを内側に回してイの字にするか、両足を内側に回してハの字にするかして止まります。
イの字やハの字のブレーキングは、股関節内旋の性質を利用したものです。
そして、投球やスイングなどの動作は、後ろ足から前足へと移した重心を前足でしっかりと止めることで「作用と反作用の法則」を利用して腕を射出することで行われます。
この時、前足でしっかりとブレーキをかけることができなければ、腕の射出をうまく行うことができず、球速やスイング速度の低下とコントロールが定まらないという結果になります。
スポーツで「足腰が大切だ」と言われるのは、後ろ脚のアクセルで加速させる脚力とその勢いを前足のしっかりと受け止めてブレーキをかけるための脚力が必要だからです。
そして、これらの身体動作の原理を利用したのが、坂道における脱力歩行法なのです。
体幹を伸ばし、体軸を傾ける
坂を登り降りをする時に心がけたいのが、体幹部を伸ばし、坂の傾斜に応じて傾けることです。
ただ、多くの人は坂の登り降りの際に目線を下げてしまいます。
【坂を登る時】
【坂を下る時】
なぜかと言いますと、人は力を出そうとすると体を丸めようとするからです。
これは、4足歩行の動物のなごりです。
4足歩行の動物は、走ったり、ジャンプしようとする前に、体を丸めます。
このような時、もっとも力が必要です。
なので、力が必要とする時に背中を丸めようとします。
4足歩行の場合は、背中を丸めている間は2本の前足に体重をかけることができます。
その間に、膝と腰を丸めて力をため、2本の後ろの足に体重かけてから膝と腰を伸ばすことでためた力を開放することで大きな推進力を得ることができます。(この時、背骨は丸まり、力を発する時に伸びます。)
が、人は前足すなわち手で体重を支えることがないため、このような方法で大きな推進力を得ることができません。
なぜならば、人は2足歩行だからです。
2足歩行の場合、必ず片足で体重を支えなければなりません。
なので、背中を丸めるという方法では足の力を使うことができません。
その代わりに、体が倒れる自由落下の力を利用することで推進力を得られます。
そのためには、なるべく身体をまっすぐにして頭の位置を高くする必要があります。
【体幹を使って坂を上がる】
【体幹を使って坂を下る】
そして、連続して力を出し続けられるように背骨を左右に揺り動かす必要があります。(この動きは魚が泳いだり、蛇やトカゲが走ったりするうごきです。)
これら2つの条件を満たすことができる姿勢が、体を伸ばす姿勢です。
人が効率よく足に力を加えたいのであれば、背中を丸める4足歩行のシステムではなく2足歩行用の新たなシステムへと変換するほかありません。
このように、日常の動きを見直すことで、人として動きの進化をし続けていけるのだとと考
えます。