緊張した時、肩に力が入ってしまうものです。
肩に力が入ってしまうと何をやっても上手くいかないということは、経験的に広く知られています。
なので、何かを上手くやらなければと思い「肩の力を抜こう」と思ったり、
緊張している人に「肩の力を抜いて」とアドバイスしたとしても
簡単にできるものではありません。
緊張すると全身に力が入りがちになりますが、肩の力を抜くことを強調されるのは、肩が脳に近く意識しやすいことと、肩を動かす神経(副神経)が脳より直接出ているため緊張を感知しやすいからなのかもしれません。
しかし「肩の力を抜こう」と思うこととは裏腹に意識すればするほど緊張が強くなってしまうものです。
また、大きく緊張を強いる場面でなくても知らず知らずのうちに肩に力が入ってしまいがちです。
ストレス社会と呼ばれる現在社会、多くの人が何らかしらのストレスに苛まれています。
そのせいなのか?肩に力が入っているような人を多く見かけます。
また、自分自身も必要以上に力を入れてしまっていることも多々あります。
私は、脱力トレーニングを行なっているので一般の人が意識できないような力みも察知できますが、多くの人は知らず知らずのうちに緊張し続け、気がつかないうちに身体的にも精神的にもストレスを溜め続けていると思うのです。
このような状態が長く続いてしまうと、身体にも精神にもよくはなく、そのまま放置してしまうと体の不調に苛まれてたり、精神に異常をきたしたりという事態にもなりかねません。
なので、自身が緊張していることに素早く気がつくことが大切だと思います。
しかし、知らず知らずのうちに緊張しているのですから気がつくわけもありません。
よく、心理的なワークなどで
「心のありようやものごとの捉え方を変えことで前向きに生きよう」
と言われています。
確かに、心のありようや物事の捉え方を変えること、前向きに生きることはとても大切です。
しかし、心だけでストレスを緩和することは不可能です。
なぜならば、ストレスは身体によって作られているからです。
四足歩行の名残りに縛られている人類
身体的にも精神的にもストレスを感じる時、身体が緊張します。
ここで、ストレスについて簡単に述べていきたいと思います。
そもそもストレスとは、外敵に晒された時に闘うもしくは逃げるために働く生理的反応です。
これは、脳の内側にある大脳辺縁系と呼ばれる本能を司る器官から起こります。
この大脳辺縁系がストレスを感じた時、脳幹という脳の最内部にある器官に指令が出され、交感神経を緊張させます。
このことで、
- 心拍数と呼吸数を増やす
- 末端部(掌や足裏)の発汗させる(冷や汗)
ます。
血液を脳と心臓、体幹部(肩や腰、お尻)と四肢帯(肩関節周りと股関節周り)の筋肉に集中させ、運動機能を高めます。
掌や足裏に汗をかかせることで、地面とのグリップを強くして滑りにくくして攻撃したり逃げたりしやすくなります。
強く緊張すると手足に汗をかいたり、冷や汗が出たり、手足が冷えたり、息苦しくなったり、ドキドキしたりするのは、このようなストレス反応のせいです。
しかし、この体に現れるストレス反応は、四足動物のシステムです。
四本足で動く時には最適なのですが、このシステムは二足歩行である我々にとっては足枷になります。
人間は、多くの動作を手先を使って行い、足裏を制御して重心をコントロールしています。
ですが、ストレスに対応する四足動物のシステムでは、ストレスを感じた時点で手先の動きが麻痺させてしまいます。
そうなると、手先は上手く動かせず、足裏の感覚が薄くなるために重心をコントロールしずらくなり不安定になります。
それによってパニックになり、
緊張する→上手くできない→パニックになる→緊張が強くなる→上手くできない
という悪循環に陥ってしまいます。
肩に力が入りやすくなる状態というのは、四足歩行を行う上では最適ですが、二足歩行で指先を上手く使いたい人間にとっては不都合です。
なので「肩の力を抜く」ことが大切なのです。
ですが、いったんストレスのシステムが働いてしまうとそれを解除することはできません。
このストレスのシステムは、ストレスの原因となる対象をやっつけるか逃げ切ることで解除されるからです。
しかし、人のストレスは、単純に外敵によるものだけではありません。
もっと複雑な状況下で起こります。
例えば、過去の嫌な記憶を思い出す時もストレスを感じ、身体にストレス反応を起こします。
しかし、ストレス反応を感知する大脳辺縁系(本能)は、外敵によるものなのか?過去の記憶なのか?の区別がつきません。
なので、ストレスを感じると通り一辺倒な対応しかできません。
これが、「肩に力が入る」本当の理由です。
なので、「肩の力を抜こう」と努めても肩の力を抜くことなどできません。
では、どのようにすればいいのか?
四足歩行の縛りから解放される糸口(呼吸)
肩に力が入っている時、横隔膜が縮んでいます。
横隔膜が縮みぱなしになると、鳩尾がつっかえて息苦しくなり、胃が圧迫されて食欲がなくなります。
また、横隔膜が適度に伸縮しないために内臓に適度な刺激が与えられずに内臓の働きが悪くなります。
内臓の働きが悪くなると、心が落ち着きません。
それは、内臓の働きが悪い状態を外敵に警戒している状態だと大脳辺縁系が誤認するためです。
このように、大脳辺縁系(本能)は、横隔膜や内臓の状態もストレスと認識しまします。
ストレスを感じ続けると、不思議なことに嫌な記憶が蘇ります。
これは、外敵の姿や行動を記憶することで自身の身を守ったり、敵をやっつけるためのものです。
ストレスを強く感じると脳に記憶されているストレスを検索して即座にストレスに対応しようとします。
もし外敵であれば、対応が遅れてしまうと生命を失うことになりかねません。
嫌な記憶が強く残り、すぐに思い出してしまうのは、そのためです。
その時に、交感神経が過剰に働き、心拍数と呼吸数が上がり、内臓の働きが悪くなり、それに伴って横隔膜が縮みます。
このような無意識下で起こるストレスによる身体反応も大脳辺縁系はしっかりと記憶しており、このような状態に陥った時に外敵が近くにいると誤認してしまいます。
ということは、横隔膜の緊張を解くことがストレス状態の解除に役立つことになります。
古来より呼吸法には精神を安定させストレスを解消する作用があると言われ実践されてきたのは、そのためです。
その理由が、横隔膜の緊張を解くことにあります。
交感神経が優位に働くと心拍数と呼吸数が上がるようにコントロールされています。
交感神経は自律神経に支配されていて自身でコントロールすることはできません。
心拍数を司る心臓は自律神経によって支配されているためコントロールできません。
しかし、呼吸を司る横隔膜は、普段は自律神経のコントロールを受けていますが、横隔膜は骨格筋であり運動神経の支配でもあります。
なので、呼吸は意識的に長く吸ったり、吐いたり、止めたりしてコントロールすることができます。
緊張した時に意図的に呼吸をゆっくりとすることで、副交感神経の働きを高めてリラックスし、精神を安定させようとするのが呼吸法という試みです。
ですが、緊張が強くなると意図的に呼吸をコントロールできなくなります。
なぜかと言いますと、過緊張状態では呼吸筋である横隔膜が縮んでしまい緩めることができないからです。
このことが、呼吸法を習得することを困難にしている大きな理由でもあります。
四足歩行の縛りを解くカギとなる丹田
ストレスが増大してしまうと呼吸法を行うことが困難です。
しかし、横隔膜を緩めなければ肩の力は抜けません。
横隔膜が緊張している状態を大脳辺縁系(本能 )が外敵と遭遇していると誤認してしまっているからです。
そのための方法として最適なのは呼吸法ではありません。
それは、中丹田を作るトレーニングです。
中丹田とは胸郭まわりの感覚意識であり空間意識です。
中丹田が作られると胸郭の働きが高まり、横隔膜の緊張が解けてきます。
それは、中丹田のベースとなっている肋骨の動きが良くなり呼吸が深くなるからです。
そうすれば、横隔膜にかかる負担が軽くなります。
このことで、横隔膜が緩んできます。
しかし、中丹田だけ作ろうとしても中丹田を作ることはできません。
丹田には、中丹田の他に上丹田と臍下丹田の3つの丹田があります。
臍下丹田とは、一般的に言われる下腹部にある丹田のことで、
上丹田は、額にある丹田のことです。
中丹田に限らず、丹田は単体で作ろうとしてもうまく作ることはできません。
なぜならば、これら3つの丹田を司っている頭蓋骨と胸郭と骨盤とが連動するようになっているためです。
これら3つの丹田を作ることで、中丹田の働きが高まり、胸郭のまわりに着いている横隔膜と肩の筋肉を緩まります。
特に肩の表層の筋肉である僧帽筋は、脳から直接出ている副神経の支配を受けているため肩の緊張が解ければ脳の過緊張が解けやすくなると考えられます。
また、横隔膜の近くを副交感神経の一つである迷走神経が通り、横隔膜が緩むことで迷走神経に働いきかけて副交感神経が優位になり精神が安定する作用も考えられます。
このことによって、四足歩行のストレス対応システムによる負の連鎖から解放されます。
この3つの丹田は、ストレスによる負の連鎖を解くために必要な人類が生み出した新しいシステムです。
脱力クリエイトでは、3つの丹田を作るための丹田トレーニングを行なっております。