人は悩みや苦しみなどの記憶を強く残してしまいがちです。
楽しかったことは時間と共に薄らいでいくように思いますが、辛かったこと、苦しかった、怖かったことは鮮明に覚えています。
不快なことなど忘れてしまえばいいのにと思いますが、不快なものほど鮮明に覚えているのには訳があります。
不快なことの記憶は、生命の危機を回避するために強く記憶に残そうとするからです。
これは、四足動物のシステムの名残です。
もし、不快なことを忘れてしまったら危険な所や危険な外敵との遭遇を繰り返してしまいます。
そうなってしまったら命がいくつあっても足りません。
このシステムを活用して、不快だったことの記憶を強く留めることで危険な所、危険な敵から身を守っていたのです。
ですが、とても安全なところで生活を送れている我々人間でも、この生命防衛システムが働いてしまいます。
それがストレス反応で、不快な記憶の保存もストレス反応の一環で行われています。
しかし、四足動物のシステムが人間でも作動してしまうと色々と困ったことになります。
人の脳は、四足動物の脳に比べてとてもハイスペックです。
そのため過去の記憶をリアルタイムで起こっているかのように再生できてしまいます。
そうすると、本能を司る大脳辺縁系が、その記憶に反応し、ストレス反応を稼働させます。
本来であれば、記憶したことと似たような場面だけで再生すべきものですが、そうでない場面、例えば部屋でくつろいでいるような全く関係ない場面でも再生されてしまいます。
そうなってしまったら、心を安らげる空間であっても、本能(大脳辺縁系)は修羅場にいると勘違いします。
本能(大脳辺縁系)には、
- 外で起きていることなのか?
- 脳内でイメージされたことなのか?
などと区別することができません。
現代人のストレスに苛まれている大きな要因は、おそらく脳の過剰に発達したことによる弊害によるものだと考えられます。
しかし、脳に記憶された出来事を消去することは基本的にはできません。
それが故に、脳に記憶された不快な過去の記憶に囚われてしまいがちです。
この囚われこそが、変性意識です。
思考の整理に大切な睡眠
変性意識状態に陥ると興奮状態になります。
興奮から醒めると疲労感を感じます。
適度な興奮でしたら安らかな睡眠につながりますが、過度な興奮は不眠になります。
仮に眠れたとしても、睡眠の質は浅いです。
睡眠が浅いと心身が疲弊します。
それは、人は睡眠に入ることで体を回復させているからです。
睡眠が浅いと体の回復を十分に行われません。
あと、最近、睡眠中に思考が整理されるということがわかってきました。
これは、考え事をしていて考えがまとまらない時は、無理して答えを出すのではなく、睡眠をとることで睡眠中に考えがまとまり問題を解決しやすくなるということです。
私も趣味のギターの練習をする時には、できないことを頑張ってやるのではなく、できないままにしておき、一晩置いてから練習すると、やりやすくなったということも経験しています。
このように、睡眠には考えや動作を脳内で整理する効果があるのです。
ですが、変性意識状態にあると良質な睡眠が取れなくなります。
ということは、思考の整理が行えなくなるので、心理的な葛藤を抱きやすくなり、ストレスに対する捉え方も下手になります。
深い変性意識状態になると潜在能力が発揮されやすくなりますが、睡眠の質が落ちるので思考を整理して能力をバージョンアップできなくなります。
深い変性意識状態では、過去に培った物、もしくは本来持っているものしか利用できないということです。
あと、睡眠の質が落ちるので、身体が疲弊します。
しかし、変性意識によって苦痛を快楽にすり替えてしまっているので体性感覚が鈍くなり、一見すると疲れ知らずになるのですが、身体への疲労と損傷は蓄積され、蝕まれます。
その歪みは、ある日突然、一気に訪れ、身体もしくは精神を崩壊させます。
これが変性意識の恐ろしいところです。
心の囚われをなくす変性意識の罠
何かに囚われている人に「囚われないように」といっても、囚われをなくすことは難しいでしょう。
囚われをなくす方法として
- 変性意識を深くどっぷりとハマること
を選択されるかも知れません。
確かに、そのような効果があると思います。
ですが、私はおすすめいたしません。
変性意識にどっぷりとハマりこむと、様々な弊害があるからです。
ここでは、変性意識によって心の囚われがなくなる理由とその弊害についてを述べていきたいと思います。
変性意識に深くハマると過去の記憶が蘇りやすくなり、さらに深くなると過去の記憶と今の現状の区別がつかなくなったり、過去にあった別な記憶がごっちゃになってしまったり、記憶の整理が行われないまま記憶されてしまいます。
そうなると、頭の中がパニックになり、感情的になったりします。
変性意識状態では物事の整理を司る大脳皮質の前頭連合野の働きが弱くなるため、記憶の整理が行われないままランダムに記憶されてしまうからです。
部屋で例えると、物が煩雑に散乱している状態です。
整理されずに、どこに何があるのかわからなくなってイライラすると思います。
なので、深い変性意識状態に陥ると、精神が不安定で、常にストレスを感じている状態になります。
しかし、とても深くはまり込むと不思議なことに、心の囚われがなくなります。
その理由は、不快な記憶を書き換えてしまい、不快な感情に触れなくなるからです。
このことを部屋などで例えると、普段は散らかっているけれど急にお客さんが来ると聞いて急いで片付けようとする時に、とりあえず目につかないように押入れやクローゼットなどにしまいこむと思います。
そんな時、丁寧に整理してしまいこむ人はまずいないでしょう。
心が落ちつた状態というのは、部屋で例えると物がほとんど置かれていない状態です。
変性意識状態もさらに深くハマりこんだ人が感じる心の落ち着きとは、このような状態のことです。
一見すると、とても片付いているように思われますが、押し入りの中やクローゼットの中はグジャグジャで煩雑として整理されていません。
とりあえず嫌なことがあったら「なかったことにしてしまえ」といった具合に押し入れの中の目のつかない所や見つけられないようにしまいこまれます。
なので、過去の不快な記憶を思い出すことはないのだと思います。
心と体の整理術 脱力トレーニング
脱力体を作ると心の落ち着きを感じることができます。
なので、脱力体とは変性意識状態なのでは?と誤解をされるかも知れませんが、全く正反対です。
脱力体による心の落ち着きは、過去の記憶がきっちりと整理されていることによるものです。
このことも部屋に例えると、押し入れの中まで整理が行き届いている状態です。
過去の出来事もしっかり整理されているため、仮に過去の記憶を思い出したとしてもその記憶に囚われることがありません。
なので、過去の記憶が思い出されても感情的にならずにすみます。
もし、深くハマりこんだ人の変性意識が、何かのきっかけで浅くなってしまったら、過去の不快な記憶が一気に蘇ってきたり、不快な感情が溢れ出してきます。
言うならば、仕舞い込んでいた押し入れを不意に開けてしまった時に、中の物が一気に崩れ出てきたようなものです。
そうならないように、自己催眠系のワークを行なっている人たちは、深い変性意識状態を維持できるように自己暗示をかけ続けるのでしょう。
多くの人は、浅い深いに関わらず変性意識状態を日常的に経験しています。
もちろん私も含めて。
なので、完全に変性意識をなくすことは不可能です。
ですが、脱力トレーニングを行い脱力体になると、変性意識を脱却することができます。
ですが、自己催眠のワークを取り入れて常に深い変性意識にある人が脱力トレーニングを受けると、過去の記憶や感情が蘇ってきて、パニックになりそうになるかも知れません。
その理由は、頭の中に乱雑にしまいこまれた記憶が整理され始めるためです。
そうすると、感情的に不安定になります。
これも部屋に例えると、押し入れの整理をする時と同じです。
押し入れの中の物を上手に整理するためには、押し入れの中のものを全部出す必要があります。
このような状態は、煩雑していて、とても不快です。
しかし、その時の不快な気持ちを我慢しなければ、一生片付けることなどできません。
煩雑した部屋に出された押入れのものをいるもの、いらないもの、とに分けて数を減らします。
そうしてから、何をどこに入れるかを決めてから押し入れの中に収納します。
収納し終えたら、ラベルを貼って、しまってある物の位置を定めます。
物の位置を定めたら、定めた場所にしまう習慣をつけていきます。
その習慣を継続し続ければ、整理の行き届いた部屋を維持することができます。
このように考えれば、脱力トレーニングは、心と体の整理・収納術でもあると言えます。
これは、脳にも反映され、脳内の記憶の整理ができるようになるからです。
もし、「変性意識状態から脱却したい」と思うのであれば、根気強く脱力トレーニングを行い、脱力体を作ることをお勧めします。