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五十肩(腕の動きを制限する つらくて痛い疾患)

「肩が痛くて腕があがらない」という人もいるかもしれません。

 

このような症状を、五十肩といいます。

 

この名称は通称で、正式には肩関節周囲炎といい、肩の関節のまわりに炎症がおこる症状で、原因は不明とされています。

 

しかし、それを起こす原因は、肩の関節を取りまいている筋肉が加齢とともに萎縮して柔軟性が悪くなることです。

 

肩まわりの筋肉の張りのバランスが悪くなることで肩の関節のアライメントがズレ、そのことで肩の関節のまわりを通る腱に負担がかかり、そのことが原因で腱が傷つき炎症が起きて強い痛みを覚えるのです。

 

炎症が治まると痛みも治まり、約1年ぐらいで自然に治癒すると言われています。

 

ですが、痛みが治まっても関節の可動性が改善されず腕の上がりが悪いままになっている人も見てきました。

 

痛みがなくなったからといって関節の可動性が改善されたわけではありません。

 

このような人の場合、慢性的な肩こりに悩まされるケースが多いです。

 

五十肩の治療の主な目的は、腕の可動性を改善することで、その結果、痛みが改善されます。

 

具体的には、肩のまわりの萎縮した筋肉の柔軟性を取り戻し筋肉の張りのバランスを整えて肩関節のアライメントを整えていきます。

 

肩関節のアライメントが整ってくると腱の引っかかりがなくなるので、それとともに肩の痛みが消失します。

 

ただ、萎縮した筋肉を改善するには時間がかかります。

 

そこで、大切なことがあります。

 

それは、痛みを覚えてもできるだけ動かすことです。

 

治療で行えることは、萎縮した筋肉に刺激を与えて一時的に肩関節の可動性を良くすることです。

 

それによって、腕を動かしやすくなりますので、痛みを覚えない程度に動かしていくうちに萎縮した筋肉に張りが戻り、肩の関節のアライメントが整ってきます。

 

なので、自身で腕を動かしてもらわなければ治療の意味もなくなってしまいます。

 

なぜ自身で動かすことが必要かと言いますと、動かさずに過保護にしていると腕を上げる筋肉が弱くなり腕を上げる力がなくなります。

 

そうなると、腕を支えられなくなるため、さらに痛みが強くなるという悪循環に陥ってしまうのです。

五十肩から脱力調整の意義を考える

五十肩で腕が上がらなくなるのは痛みが原因ではありません。

 

痛みを覚えるからあげられないのではなく、腕が上がらなくなる本当の原因は肩甲骨の位置です。

 

肩甲骨の位置が前にズレると腕を上げにくくなります。

 

腕を上に上げる働きをしているのは、肩の関節だけでは行えません。

 

腕を真横に上げるとき、肩関節が60度、肩甲骨が30度動きます。

 

必ず肩関節とともに肩甲骨が連動して動き、これを肩甲・上腕リズムといいます。

 

ですので、肩の可動域を改善するためには腕のまわりの筋肉だけではなく、肩甲骨のまわりの筋肉の張りのバランスを整えなければいけません。

 

五十肩を引き起こす大きな原因となるのが、大胸筋という胸の筋肉と広背筋という背中の筋肉が縮み伸ばしにくくなることです。

 

もちろん例外も少なからずありますが、この二つの筋肉の張りのバランスを一番に考える必要があります。

 

ということは、大胸筋と広背筋の柔軟性が保たれれば五十肩を防ぐことができるということになります。

 

これらの筋肉の柔軟性を保つためには、腕を上に上げることを習慣づけることです。

 

五十肩に限らず、運動器疾患のほとんどが廃用性の筋萎縮が原因で起こる筋肉の張りのアンバランスなのです。

 

治療は、外から力を加えて刺激を与え、筋肉の張りのバランスを整えやすい状況を作ることです。

 

ということは、治療で使うポイントが予防を行ううえで重要となるということです。

 

ただ、予防法は治療法の延長線上にはないということは理解しなければいけません。

 

予防の方法では治療ができないように、治療の方法では予防はできません。

 

予防と治療とでは目的が異なります。

 

目的が異なれば、方法も異なるのです。

 

ただ、押さえるポイントは同じなので、治療で用いたポイントは予防のためにも重要となります。

 

そのように、治療の臨床で得たポイントを踏まえながら予防のために再構築したものが脱力調整法「大田式調整動作」です。

 

なので、自身で体を動かしたにも関わらず全身治療を行った後のように体が軽くなるのは、そのためです。

 

治療は、筋肉の衰えた過程をたどりながら行っていきます。

 

なので、どのようにして筋肉の萎縮が起こったのかを考える必要があります。

 

治療というのは、悪くなった過程をたどっていく作業ということになります。

 

このことを逆算して考えると、予防するにはどのようにすればいいのかが理解できます。

 

例えば、五十肩の場合は大胸筋と広背筋の柔軟性の低下が原因と考えられるので、大胸筋と広背筋の柔軟性を高めれば予防できることになります。

 

人は痛みを覚えなければ体を省みないところがあります。

 

ですが、五十肩のように腱にダメージが起こると長期間痛みと付き合わなければいけません。

 

そうなる前に、そのようにならないように予防するという考え方は、体に先行投資するようなものだと思います。

 

痛みがなければ、腕を上げることは苦ではありません。

 

億劫に思うかもしれませんが、毎日腕を上げることを習慣づけるだけで、五十肩を予防することができます。

 

そうすれば、五十肩で苦しまなくてすみ、治療にかかる費用と時間を節約にもなると思うのです。