腱鞘炎(ばね指)は、特に、中指と親指、手首などを動かした時に痛みが生じる疾患です。
この原因は、指を曲げる筋肉が縮んで固くなることで、手首を通る指を動かす腱の通り道である腱鞘が傷つき、炎症を起こすことです。
腱鞘炎による外科的な処置として腱鞘のあたりを手術する方法もありますが、マッサージや手首のストレッチなどを行いながら様子を見るような保存療法が一般的かもしれません。
また、整形外科などでは、レーザー治療器などが効果が高いとも言われています。
私は、指圧やリハビリの分野で腱鞘炎の方を見てきましたので、処置の方法としては、指につながる筋肉を緩めて腱鞘にかかる負担を少なくする方法を試みていました。
この方法は、ただ痛めた指や手首に対してマッサージやストレッチを行うわけではありません。
痛めたところにマッサージやストレッチを行うと、かえって炎症を広げてしまいます。
では、どのようにすれば良いのか?
ここでアプローチするのが肘です。
なぜかと言いますと、指を動かす筋肉の多くは肘に着いているからです。
事実、腱鞘炎の人の肘から先(上腕)の筋肉がガチガチに固くなっています。
ということは、肘から先の筋肉の緊張がゆるめば、痛みも軽減することになります。
例えば、痛めている箇所は、暖めてしまうと炎症を助長させる恐れがありますが、肘の辺りを蒸しタオルやドライヤーなどで暖めると筋肉と肘から先の筋肉がゆるみやすくなり、手首や指の痛みも軽減します。
なので、炎症が強い時は、痛めている手首や指を避けて肘から先(上腕)のマッサージを行ないます。
炎症が治まってきたら、固くなった筋肉を伸ばす目的で、手首や指のストレッチをしていきます。
縮んだ筋肉をゆっくりと伸ばすことで、腱が柔らかくなり腱鞘にかかる負担が少なくなります。
これが、一般的な手技療法を用いた治療例です。
ですが、このような手技療法では、治癒に時間がかかります。
実は、腱鞘炎の原因を作るところは、肘ではありません。
それは、肩関節です。
指や手首と肩、一見して関係がなさそうな感じがすると思います。
指や手首の運動は肘先の筋肉の運動ですが、指や手首の動きは、背骨や肋骨、肩甲骨などが連動して動くことで、スムーズに動かすことができるのです。
そして腱鞘炎の人は、肩関節の動きが悪くなっている傾向にあります。
肩の関節まわりの動きが悪くなることで手首に負担をかけてしまうのが、腱鞘炎を起こす原因だったのです。
整形外科などでは、炎症を起こしている箇所をメインで診ていきますので、肩周りの動きなどをチェックすることなどありません。
なので、肩の関節にアプローチすることはないでしょう。
ある腱鞘炎の患者さんが腕を動かしている動作を見て、腱鞘炎と肩関節の動きとの関係に気がつきました。
「ああ、肩の位置が少し悪いな!もしかしたら、肩の位置を調整できれば手首の痛みが取れるかも!」
と思い、肩の関節の調整を行なってから肘先(前腕)のマッサージをしてみると、不思議と筋肉の張りが和らぎ、痛みも和らいでいました。
この時に、肩関節の動きが改善できると肘から先(前腕)の張りが不思議と取れることを発見したのです。
肩の関節を調整するだけでも手首の痛みが軽減できますが、さらに肘から先をマッサージすることで痛みが軽減します。
そうしてから、手首のストレッチを行います。
このことで、縮んだ筋肉が伸ばされて、腱鞘への負担が軽減できます。
手首が痛いを言えば、手首に気が取られてしまいがちです。
ですが、手首以外の場所が治療のポイントになるケースの方が多いと思います。
手技療法が全身操作を基本としているのは、そのためです。
腱鞘炎のような体の末端の痛みでも、体幹部の動きが悪くなることが原因です。
そのことによって、アンバランスな体の使い方がなされ、腱鞘炎のようなな症状を引き起こしていま宇野です。
なので、体全体のバランスを診てゆくことが、重要だと言えます。