巷では、強い力で揉んだり押したりするマッサージが人気があり、熱烈なマッサージファンは例外なく強もみマッサージが好きです。
強もみマッサージが好きな人は、マッサージに惜しみなくお金を支払いますが、マッサージが弱いスタッフがいると店にクレームを言います。
言うなれば、口うるさいお得様と言う感じです。
このような口うるさいお徳様から気に入られたら安泰です。
巷のマッサージ屋さんに勤めるセラピストは、歩合であるため指名の数を増やすことで自身の収益が上がります。
このような背景から、マッサージ屋さんの多くが強刺激のマッサージを行います。
ですが、強刺激のマッサージは「百害あって一利なし」です。
マッサージは、本来、医療行為となるので「あんまマッサージ指圧師」という国家資格が必要で、資格を取るためには3年間専門学校へ通い、実技の他に解剖学や生理学、臨床医学、東洋医学などの知識を学び、国家試験に合格する必要があります。
本来ならば、身体に負担がかからないように施すべきで、お客さんの要望に対しても理由を説明して強刺激の施術を避けるべきです。
なぜならば、マッサージ業は医業類似行為であり、サービス業ではないからです。
ですが、巷のマッサージ屋さんで働くスタッフの多くが、国家資格を持っていません。
言うなれば、身体に関する知識がない人がお客さんの言いなりになってマッサージを行っているということです。
司法において「身体に危害を及ぼさなければ職業選択の自由が認められる」という判例が出されたため、国家資格を有するマッサージ業も職業選択の自由によってマッサージと類似する行為が認められてしまったという、ややこしい話があります。
巷のマッサージ屋さんは「〜マッサージ」とか「〜指圧」とかの看板やメニューを書かず、「ボディケア」とか「ほぐし」とか「セラピー」とか「整体」とか言うようなまどろっこしいふうにして営業しているのは、そのためです。
このような背景から、強刺激のマッサージが主流となったのですが、ここで疑問が生じます。
なぜ、マッサージを受け続けると強刺激になるのか?
マッサージが強刺激になる背景
マッサージを行うお店のほとんどが強刺激が当たり前になってしまいます。
はじめての人に、いきなり強いマッサージをしようとは思わないのでしょうが、
強刺激の施術に慣れてしまっているセラピストでは
- 深層心理でクレームを恐れている
のと、
- 当たりの柔らかいマッサージを行う技術がない
ため、刺激過多なマッサージが身についています。
なので、はじめてマッサージを受けようとする人にも強刺激のマッサージが施されます。
はじめてマッサージを受ける人にとって、強もみマッサージは痛みだけで苦痛です。
なので、2度とマッサージを受けたくないと思う人もいるかもしれません。
痛みに耐えれば治ると思い、頑張って受け続ける人もいます。
不思議なことに、痛みしか感じなかった人でも、次第に強刺激に慣れてきます。
そうすると、強刺激のマッサージによって症状が軽くなるという経験が刻み込まれます。
- 強い刺激を我慢すれば痛みが取れて心地良くなる
ということが脳に刻まれると、そのことを快感に感じるようになってきます。
そうやって、強刺激のマッサージを受け続ける習慣が身についていきます。
強い刺激を与えると、ある種の爽快感と共に痛みが消失してする現象が起こるためです。
もっとも、一時すれば爽快感もなくなり、元の痛みが復活してしまいますが。
さらに継続して強いマッサージを受け続けることで、爽快になり痛みが取れるというふうに脳に深く刷り込まれます。
ちなみに、疑似?心理学では、これらのことを「アンカー」とか「トリガー」と呼んでおり、
アンカーとは、安心や楽しさといったプラスの感情、不安や恐怖といったマイナスの感情を伴う強い感情を伴う体験のことで、
トリガーとは、「アンカー」を引き起こすきっかけのことだそうです。
この時、強いマッサージという事柄が「トリガー」となり、爽快になる、痛みが取れると言う感覚や感情が「アンカー」になります。
こうして、強いマッサージでなければ、
- 痛みが取れない
- 爽快になれない
と思い込み、強いマッサージをリピートし続けるシステムが構築されるのです。
言うなれば、ヤク中の人がヤクが切れると打たなければ気が済まないのと同じことです。
では、どのようにして強もみマッサージにハマってしまうのでしょう。
強もみマッサージと変性意識
強もみマッサージは、変性意識が深く関わっています。
【参考記事】脳のバグ(誤作動)を起こす変性意識
まず、強刺激のマッサージには、一時的に痛みを取り除く鎮静効果があると言われています。(あくまでも一時的なものです)
これは、強刺激を耐える場面で、多量のドーパミンが放出されるからだと考えられます。
ドーパミンは快楽物質で、脳内で分泌されると興奮状態と爽快感を覚えます。
運動を行うときに分泌が活発になり、やる気を与える重要なホルモンです。
ですが、運動をしなくてもドーパミンが分泌されない状況というのは、あまり好ましくありません。
運動を行うとドーパミンの他に、ドーパミンの働きを抑えるセロトニンなどのホルモンも同時に分泌されます。
ですが、運動以外でドーパミンが分泌されてしまうと、セロトニンが分泌されずにドーパミンだけが過剰に分泌されてしまいます。
そうなると、ドーパミンに反応しにくいように耐性が作られます。
爽快感を得ようと強い刺激を求めて、ドーパミンを出そうとします。
強刺激のマッサージによってドーパミンが分泌されます。
そうして、徐々に強いマッサージの刺激を求めるようになります。
しかし、これは脳の求めであって、身体の求めではありません。
脳以外の身体は、強い刺激など求めていません。
身体を守る侵害刺激反射
理由は、簡単です。
筋肉や皮膚、末梢神経などが損傷される危険性が高まるためです。
通常は、皮膚で痛みを覚えると脊髄を経由して脳まで伝えられます。
しかし、物理的な刺激が強い場合は、脳に痛みの情報を上げる前に、脊髄から筋肉へ直接収縮させて危険を回避します。
例えば
- 熱いものを触った時には手を引っ込めたり(屈曲反射)
- 筋肉が伸ばされたら縮めたり(伸張反射)
などような時です。
脳に伝わる前に対応しなければ組織が大きく破壊されてしまうためです。
このように、身体の危機から身を守るための反射を侵害刺激反射と言います。
強もみマッサージを受けている時にも、この侵害刺激反射が働き、体の組織を守るために筋肉を収縮させています。
その証拠に、強もみマッサージが施されている最中の人の筋肉は収縮しとても緊張させています。
【関連記事】強刺激の問題点(侵害刺激反射による悪影響)
そうやって、身体に強い力が加わって組織が壊れないように防御しているのです。
強もみマッサージによる快感と共依存
不思議なことに、強もみマッサージを受けて慣れている人には、筋肉が体を守っている感覚がありません。
通常、反射によって筋肉が反応しても、数秒後には痛みの刺激を感じるものです。
実際に、不意に熱いものを触れてしまった時には手を引っ込めてから数秒後に熱いと認識できます。
しかし、筋肉が防御するぐらいの強いマッサージを受けて、痛みではなく快感を感じると言うことは、とても不自然であり、不可解なことです
それどころか、脳では「気持ちいい」と感じています。
さらに「もっと強く!」と要求するぐらいです。
このような不可解なことを起こしてしまうのが、変性意識という脳のバグ(誤作動)です。
この変性意識状態に陥ると、身体感覚が鈍くなります。
このことで強刺激によって筋肉が緊張し続けていることを認識できなくなり、逆に「快感」と誤認されてしまいます。
このようなことを引き起こしているのが、変性意識状態に陥ることによるドーパミンの過剰分泌です。
強い刺激のマッサージによってドーパミンが過剰に出されるが、ドーパミンに耐性ができてしまって、ドーパミンの量を増やすために、さらに強い刺激を求めるようになる。
そうやって、マッサージを受けるごとに強い刺激を求めてしまうのです。
ですが、それとは裏腹に、強くなっていく刺激を食い止めるために筋肉の緊張を高め続けます。
このことで、慢性的な筋肉の過緊張状態が強いられます。
慢性的な筋肉の過緊張状態が続くと血行が悪くなります。
強もみマッサージによって慢性的な過緊張状態が続けば、筋肉の伸縮がなくなり、血行不良を助長させてしまいます。
しかし、体の反応とは裏腹に、脳がそれを求める。
これは、強もみマッサージに対する依存です。
この依存状態を引き起こしているのがドーパミン過多であり、変性意識と言う脳のバグ(誤作動)だったのです。
そして、強もみマッサージを行うセラピストも、リピートしてもらいたいがために強もみマッサージを施すという共依存の状態になります。
強もみマッサージを続ける限り、痛みや不快な症状を改善することはありません。
ですが、その快楽に溺れて、病みつきになり、身体を蝕む。
これが強もみマッサージによる弊害なのです。