脱力クリエイトは、脱力体を作る「脱力トレーニング」をテーマにしています。
その中で、「瞬間動作」という予備動作を行わないフットワーク法を提案しています。
予備動作とは、動き始める前に
- 進行方向と逆方向に体重をかける
- 体を浮かす
- 体を沈める
などの動作です。
日常生活においては、予備動作を行なってから動くことがありませんが、スポーツでは多く用いられるフットワーク法です。
スポーツで予備動作を行う理由は、脚の力を使って、素早く、パワフルな初速を得るためです。
ですが、この予備動作、本当は必要ないのです。
でも、何も疑問に思わず当たり前のようにやっています。
これこそが、変性意識であり、植え付けられた先入観なのです。
スポーツと変性意識との関係
変性意識とは、通常の意識状態とは異なる意識のことです。
通常の意識状態とは、覚醒(起きている状態)のことであり、脳が活性化して五感が研ぎ澄まされている状態のことです。
ちなみに、その反対が睡眠です。
意識の構成には、
- 清明度
- 質的
- 広がり
の3つの要素があります。
意識の状態に異常をきたす
- 意識障害
- 「せん妄」や「もうろう」
- 「催眠」
があります。
これらが、変性意識にあたります。
【参考記事】催眠とは(意識が狭窄する変性意識)
ただ、「変性意識」といっても、軽度なレベルであれば、日常誰しも経験しています。
それが故に、変性意識による弊害を無意識のうちに受けているのです。
その一つに、スポーツにおけるフットワークであり、それは植え付けられた先入観によるものです。
特に球技は、変性意識に陥りやすいと言えます。
その理由は、意識がボールに集中するためです。
人は、何か一点に意識が集中すると意識の広がりが狭くなる「催眠」状態に陥ります。
そうすると、思考が働きにくくなります。
その反面、記憶力が上がります。
思考が働きにくくなるため、指導者の指導を素直に吸収します。
裏を返せば、指導者の指導を鵜呑みにしやすくなるということです。
もし、指導者の指導が悪ければ、生徒の上達具合も低くなります。
あと、生徒自身が催眠状態に陥りにくいと指導者の言う通りにできないため落ちこぼれることもあるかもしれません。
指導の仕方がうまい指導者と催眠状態にうまく入ることのできる生徒との噛み合わせがうまくいくと、上位に上がることも可能になるでしょう。
基本的に、催眠状態が深くなるほど記憶力が高まり、指導者の意図を吸収しやすく、上達が早くなります。
ただ、催眠状態はコピーすることは得意でも、自らで作り上げることは不得意です。
なので、はじめの指導者の指導法が、その後の選手の運命が決まります。
ここでは、スポーツにおけるフットワークと変性意識について述べていきたいと思います。
スポーツにおけるフットワーク
スポーツでは、相手の動きに瞬時に対応することが強いられるため、両足を広げて腰を落とした姿勢から横方向へ瞬時に動くことが要求されます。
そうすると、両足に体重が乗っているため足を進行方向である横へ足を出すことができません。
足を横に出すために、
- 逆方向へ体重を乗せる
- ジャンプして体を浮かす
- 膝をさらに曲げて体を落とす
などを予備動作を行います。
そうしないと「素早く動かせない」という先入観があります。
これは、スポーツをはじめた時に、指導される内容が強く刻まられるためです。
その内容とは、
- 脚で地面を蹴って
とか
- 膝を曲げて
とか
- スプリットステップ(動き始める時に行うジャンプ)をして
などです。
仮に、指導者が予備動作を具体的に指導することがなかったとしも、
しなくても、
- 相手の横を抜く
とか
- 相手を横に抜かさない
ように指導されたら、必然的に中腰の姿勢が強いられ、意識が横に広がります。
そうなったら、予備動作を行わなければ体を動かすことすらできません。
中腰になると常に膝を曲げて脚に力が入ってしまうため、足を前に出すことができなくなるからです。
なので、瞬時に素早く動くために、予備動作が必要となるのです。
ですが、この予備動作は相手に動きを予測されやすくなるという欠点があります。
特にスポーツの熟練者ほど、この予備動作を見逃しません。
なので、
- フェイントを使って相手の動きを止めるか
という技術が磨かられます。
このような、駆け引きがスポーツの醍醐味の一つなのでしょう。
予備動作を必要としないフットワーク
ですが、予備動作を必要としないフットワークが存在し、一握りの選手だけが行なっています。
このような選手は、フェイントをかけるのではなく、
- 瞬時に動きはじめ、相手の意表をつく
という狐につままれたようなプレーを行います。
相手の選手は、何が起きているのか把握できず、ほんの一瞬、動きが止まります。
気がついたら数メートル先を走っているという結果になります。
相手選手も超一流の選手なので、予備動作を見抜く能力に長けています。
なのに、このようなことができるのか?
これは、中腰の姿勢でも予備動作を取らずに動くシステムがあるためです。
武術では、このような動作が基本とされており、予備動作を取ることを「居付く」と呼び、意味嫌います。
【参考記事】武術が予備動作を嫌う訳
ただ、現実には実行することは難しく、秘伝のように扱われているようです。
(武術系で言われる「膝抜き」は予備動作の一種だと捉えます)
これを、一握りのスポーツ選手は、誰に教わることなく身につけ、実行していたのです。
一見すると摩訶不思議なことですが、このような動作は、普段の歩行と同じ動作システムなのです。
歩くということ
我々が普段、歩いたりする瞬間に予備動作を取る必要がないのは、中腰で動く必要がないためです。
人の歩行は、必要以上に脚の力を使わなくても歩きはじめることができます。
なぜかと言いますと、歩きはじめる時に体幹部を少し傾けだけで足が前に出るようになっているからです。
【参考記事】重力と歩行
なので、歩きはじめで大きな力を必要としません。
もちろん、歩き続けるためには脚の筋力が必要ですが、それは前に出した足で体重を支える必要があるためです。
ということは、前に進むだけだったら、筋力は必要ないということです。
ですが、スポーツのように瞬時に動くには、「体を傾けて動く」のではスピードが足りません。
先入観に囚われない逆転の発想
なので、予備動作を行うのですが、そうなると予備動作を行うことが当たり前となり、そのことに指導者もプレーヤーも疑問を呈することもありません。
これこそが、思考停止状態であり、催眠状態と言う変性意識そのものです。
【参考記事】先入観
予備動作のいらないフットワーク法は、普通の歩行と同じ動作システムです。
ですが、習得することは容易ではありません。
なぜかと言いますと、力みやすい中腰の姿勢でも脱力体をキープする必要があるためです。
【関連ページ】瞬間動作とは
特に、予備動作を行なうことが当たり前になっている人にとっては、さらに困難を極めます。
その理由は、予備動作を行う脳のプログラムが力みをうみ、予備動作のない動きを邪魔するからです。
それが、教育によって培われた常識や植え付けられた先入観なのです。
人は先入観に囚われると、現実をみることができなくなります。
そして、先入観によって、自身が自覚できない現象を頭から否定し、受け入れられなくなります。
- 人としての成長が止める
これが、先入観という変性意識の罠です。
ですが、
- 思考を整理
して
- 身体の感性
を高めることができれば、
- 先入観や常識を払拭し、
人は成長し続けることができると思うのです。