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究極の変性意識「ゾーン」(身体を犠牲にして得られるもの)

スポーツ選手が「調子が良く、ゾーンに入ることができた」と言うことを聞くことがあります。

 

昔の人が「無我の境地」と呼んでいた状態でもあります。

 

「ゾーン」に入ると、

  • 普段以上の能力が発揮できたり
  • プレーに集中できたり

など、パフォーマンスを高めることができます。

 

なので、あるスポーツの元トップ選手は「現役の頃ゾーンに入ることを目指していた」と語っているぐらいです。

 

心理学でも「フロー」というゾーンと類似する言葉がありますが、この記事では「ゾーン」で統一いたします。

【参考サイト】フロー(心理学)Wikipedia

 

私自身、何度となく「ゾーン」を経験しました。

 

そして「ゾーン」の正体は、究極の変性意識だと結論づけました。

ゾーンの正体

 ゾーンは究極に深い変性意識(催眠)状態のことだと考えられます。

 

このことで、視野を狭くして相手や環境、自身の身体情報をシャットダウンして脳内にある危機回避能力だけを抽出させて高めることができます。

 

これは、人が、危機的状況に陥った時、スローモーションのようにゆっくりと時間が流れるように感じることで生命にとって最悪の危機を回避するための能力です。

【参考記事】『「危ない!」の瞬間、全てがスローモーションで見える』は正しかった!

 

ゾーンに入ることで危機回避能力が活用できるようになると、情報の処理能力や身体機能を高めることができます。

 

ですが、ゾーンに入ることは、とても困難です。

ゾーンに入ることが困難な大きな理由

「ゾーン」に入ることは、とても困難です。

 

その理由は、脳の機能と反するためです。

 

ゾーンの正体は、深い変性意識によって引き出された危機回避能力です。

 

変性意識に深く入ると、大脳皮質の前頭連合野という意識を統合する箇所の働きが弱くなります。

 

このことによって

  • 認知機能
  • 五感
  • 思考

などの機能が低下してしまいます。

 

これは、自意識が弱くなることを意味し、自分がなくなるということです。

 

このようなことを身体は望みません。

 

そのため、人は変性意識に深く入ることを本能的に嫌います。

 

これが、ゾーンに入ることのできない大きな理由なのです。

私のゾーン体験

私は、20歳の頃から呼吸法や丹田法、脱力法などを実践していました。

 

その影響からなのか?

 

比較的多くのゾーンを体験してきました。

 

私が体験したゾーンは、

  • バイクで転倒しそうになった時
  • 階段で足を滑らした時
  • テニスをしている時(数十回以上)

などでした。

バイクで転倒しそうになった

私が、二十歳の頃、山道を走っていました。

 

大きなカーブがあり、

体を傾けて曲がっていた時、

突然、タイヤが滑ってしまいました。

 

「あっ、倒れる」

と思った瞬間、スローモーションのように時間が流れ、

なぜか知らないけれど

「前を見なければ」

と思い

「地面を足で蹴ろう」

と思いつき、右足で地面を蹴りました。

 

その甲斐あって、体勢を立て直すことができ、難なくを得ました。

 

その時には、平然としていましたが、後になって怖さを共に身震いをしたのを覚えています。

 

もし、あのまま転倒していたら大怪我をしていたかも知れません。

 

幸い、滑ったタイヤがリア(後輪)だったことと、小さなバイクで車重も軽かったからあのような対応ができたのでしょう。

 

それを差し置いても、1秒もない一瞬の中で思考を巡らせて冷静に行動できたことが不思議です。

階段の踊り場で足を滑らした時

これは、社会人になったばかりの頃の話です。

 

その日は雨が降っていました。

 

急ぎの要件があり外の階段を急足で駆け降りていました。

 

踊り場のところを曲がろうとした瞬間、水たまりがあり、そこで足を滑らせてしまい、転倒しそうになりました。

 

その瞬間、スローモーションのように時間が流れ、

バイクでの出来事を思い出し、

「前を向く」

と思考が働き、前に向けました。

 

そうしたら滑った足とは反対の足で着地しており、滑ることなく、そのまま駆け降りていきました。

テニスでのこと

私は、高校の時はテニス部に所属しておりましたが、大学に入ってからはほとんどテニスはしていませんでした。

 

社会人になって3年目の頃、友人に誘われてテニスを再開しました。

 

はじめは遊び感覚で行なっていましたが、次第に草試合などに出場するようになりました。

 

その腕前は、お世辞にも強いというレベルではなく、はじめのうちは負けが込んでいました。

 

試合の経験を積むうちに勝率も上がるようになりましたが、仕事が忙しく練習もままならず、たいして強くはありませんでしたが・・・。

 

しかし、時々ですが、ボールがゆっくり飛んで見えるようなことを経験するようになっていました。

 

試合の経験を積むごとに、その頻度は上がり、20代後半の頃にはかなりの確率で起こるようになっていました。

 

試合中常にというわけではなく、特に相手のサービスをリターン(レシーブ)する時に起こります。

 

その状態になると時間がゆっくり流れ、ボールに意識が集中し、相手の動きが見え、的確にリターンできました。

 

そうなるとサーブを打った相手は、全く反応できません。

 

普段よりもレベルが数倍にUPしたような感じです。

 

さらに、その率が高まるとレシーブ以外のショットでも起こるようになります。

 

この状態になると、正直、誰にも負ける気がしなくなっていました。

 

ただ、29歳で東京へ上京したの機にテニスを行わなくなり、試合に出ることもなくなりました。

 

また、地元に戻ってからテニスを再開しましたが、以前のようにボールがスローモーションになることはなくなりました。

 

ブランクがあったことと試合に出ていなかったからということもあったと思います。

 

その数年後、ボールがスローモーションになる感覚を起こすことができました。

 

それは、ある試合に出た時、相手が格上で、レベル的には全く歯の立たない人でした。

 

相手のサービスをリターンする時、相手のサーブが遅く甘く入ったのを見逃さず打ち込み、サーバーに反応させない見事なリターンエースを決めました。

 

内心「舐められたものだな」と思っていたら、

ふと足元を見ると

「あれ、なんでこんなに前にいるんだろう」

と思っていました。

 

相手の次のサーブも何となく

「センターに跳ねるスピンサーブ」

ということがわかったのですが、

「いや、待てよ」

と思った瞬間、時間の流れが元に戻りあっさりとサービスを決められてしまい、それ以降、スローモーションになることはなく、実力通りの試合結果となり、その試合を落としました。

 

この日、家内が観戦していて、

「あの時すごかったね」

と言い

「どうして?」

と聞くと

「相手の人がすごく速いサーブを打ったと思ったら、素早く前に出て、すごく早いリターンを打っていたよ。周りの人もオーと歓声をあげていたんだよ」

と聞き、とても驚きました。

 

自分自身では、前に動いていた記憶がなかったからです。

 

それ以降、試合中もそれ以外のことでも、スローモーションを経験することはなくなりました。

ゾーンに入って気がついたこと

スローモーションになった経験を思い出す中で共通することがあります。

 

それは、

  • 視点が一点に集中していた

と言うことです。

 

私が、この記事で、フロー(直訳すると「流れ」)ではなくゾーン(直訳すると「範囲」とか「区間」)と言う言葉を使う理由は、得られた感覚からゾーンと言う言葉の方がしっくりくるからでした。

 

そして、スローモーションのように時間がゆっくりと流れます。

 

なので、時間の余裕が生まれ、対応の選択肢が増え、その結果、身体の機能や能力が高められ、普段では考えられないハイパフォーマンスを行うことができます。

ですが、ゾーンには致命的な欠陥があります。

 

それは、

  • 身体に多くの負担を強いる

ことです。

 

理由は、簡単です。

 

集中力を極限に高めることによって、合理的な身体動作を行わなくても結果を出せるようになるからです。

私自身もゾーンを多用した頃は、坐骨神経痛に悩んでいました。

 

それは、ゾーンを多用したことで体の歪みを強くしたため、体の一部分に負担を強いたためです。

 

そううち、施術の仕事をはじめるにあたり、身体の自己調整を工夫するようになり、坐骨神経痛も改善されました。

 

それと同時に、「ゾーン」に入りにくくなったことに気がついたのです。

 

おそらく、身体のバランスを整うことで、深い変性意識に陥らなくなったからでしょう。

 

なので、何年かぶりにゾーンに入った時に、二回目のレシーブの時に「待った」がかかるようになったのでしょう。

 

あの時は、せっかくゾーンに入っていい感じになったのに「なんで、ブレーキをかけたのだろう」と後悔していましたが、今になって思えばブレーキがかかって良かったと思っています。

 

もし、あのまま「ゾーン」にうまく入っていたら、どっぷりとテニスと変性意識の世界にハマりこみ、身体を痛め、家族を蔑ろにしてしまったかも知れません。

 

ただが趣味で大袈裟だと思われるかも知れませんが、深い変性意識には人生を大きく左右する恐ろしい魔力があるのです。

 

そのうち、その後悔の念も薄れ、次第になくなりました。

 

それと言うのも、身体のバランスを強く意識するようになってから、不思議をテニスをしたいという衝動が薄らぎ、プレーする頻度も減ってきたからです。

 

ただ不思議なことに、練習量が少なくなり、試合に出る頻度も少なくなっていたにも関わらず、時々試合に出ると、以前よりも楽に勝てるようになってきました。

 

その最大の理由は、相手の動きがよく見えるようになったことにありました。

 

それまではボールに集中していました。なのでゾーンに入りやすかったのでしょう。

 

ですが、テニスから離れて相手の体の動きとボールとが同時に見えるようになったのです。

 

そうすると、相手の動きとボールの軌道が予測がしやすくなり、素早く優位な位置に移動することができるため、無理な体勢でボールを打つことが少なくなりました。

 

ただ、今は、5年以上全くテニスをしていません。

 

職業柄、土日に練習できないということもありますが、身体のバランスを大きく崩す動作と競い合うことによるストレスを強いることを、受け付けなくなったことが一番大きいように思います。

変性意識カースト

多くの人は、変性意識が深くなることはありません。

 

ですが、深い変性意識に入ると大きなメリットがあります。

 

それは、

  • 記憶力が上がる

というメリットです。

 

人間社会を生きる上で記憶力が高いと大きなアドバンテージ(優位)になります。

 

そして、

  • 感情をコントロールすることができる

というメリットです。

 

感情に振り回されてしまうと人間関係に歪みを生じさせます。

 

人は、イライラしたり、ビクビクしている人よりも明るく、元気な人を好みます。

 

なので、明るく元気な人になれるように感情をコントロールできれば、人間関係を良くして、社会生活を円滑に送れるようになります。

 

あと、

  • 潜在能力を引き上げられる
  • 感覚を鋭くすることができる(五感が鋭くなる)
  • 感覚を鈍くすることもできる(痛みを消す)
  • 直感力が高まる
  • ゾーンに入りやすくなる

などの能力が高まります。

 

このように、変性意識に深く入れる人と、そうでない人との能力に差が出ます。

 

さらに、

  • 人心を掌握する

という能力も身につきます。

 

なぜならば、深い変性意識にある人は、浅い変性意識の人を惹きつける傾向があるためです。

 【関連記事】変性意識カースト(人間関係に潜む背景)

 

こういった理由から、自己啓発セミナーなどでは、変性意識に入るようなワークショップが積極的に行われているのでしょう。

 

特に、人と競うようなことでは、これらの能力があると優位に立つことができます。

日本のトッププレーヤーも多用しているゾーン

変性意識に深く入ることは、スポーツにおいても優位になります。

 

テニスの世界トッププレーヤーの日本人の選手がいますが、この選手は、ゾーンに入ることが得意なプレーヤーです。

 

この選手は、日本人で初めて世界のTOP10に入ったこともある選手で、日本人選手の中では群を抜いており、四大大会で優勝まで進んだことのある選手でもあります。

 

世界のトップの選手は、身長も高く、体格も良い選手の多い中、体格に劣る日本人選手には不利です。

 

その中で、戦い抜いて行けるだけでも素晴らしいことだと思います。

 

ですが、この選手は、故障が多いのが気になるところです。

 

体格に恵まれた選手と激しい戦いを強いられるので、身体に負担をかけてしまうことは否めません。

 

ですが、それだけが故障の原因ではないように思います。

ゾーンに入る選手に故障が多い理由

これは、10年ぐらい前の話です。

 

たまたまスポーツニュースを見ていた時、テレビでこの日本人プレイヤーの歩く姿を見ました。

 

その後、その当時、メジャーリーグで活躍していた日本人選手の歩き姿が映りました。

 

その二人の歩き方が対照的で、

  • 日本人テニスプレーヤーの歩き方はとてもぎこちなく

それに対して、

  • 日本人メジャーリーガーの歩き方はとてもスムーズ

でした。

 

それぞれのトッププレーヤーであるにも関わらず、歩き方にこれ程差があったのです。

 

しかも、メジャーリーガーの人の方が10歳以上年齢も上なのです。

 

私は、身体調整を専門としているので、歩く姿を見るだけで、体の状態やコンディションを知ることができます。

 

テニスプレーヤーは、

  • 体の歪みが強く、身体の構造に沿わない動作が習慣化されている

それに対して、メジャーリーガーのほうは、

  • 常に身体が調整されて身体の構造に従った洗練された身体動作が行われている

 ように見受けられました。

 

実際に、メジャーリーガーの選手は、大きな故障のないまま40過ぎまで現役を続け、数年前に引退しました。

 

テニスプレイヤーの人は現役は続けていますが、故障続きでコンスタントに試合に出れておらず、ランキングを下げています。

 

プロスポーツと言う過酷な環境の中で行い続けるため、トレーニングと身体の調整に余念がなくても故障するのは仕方がないとは思います。

 

ですが、故障の多いのは、ゾーンを多用していることで身体に過大な負担を強いているように思えてなりません。

ゾーンの限界

この日本人テニスプレーヤーは、試合を見る限り、頻繁にゾーンに入ることで身体に過剰な負担をかけています。

 

それに対して、現在、頂点に立っている選手は、ゾーンに入ることなくプレーしているように見受けられます。

 

よく知られる話では、

  • ゾーンに入らなければハイパフォーマンスを発揮できない

と思われているようです。

 

ですが、そうではないのです。

 

頂点に立っている選手も、例外なく集中力を高めて試合に臨んでいることは確かです。

 

ですが、集中力の高め方に違いがあります。

 

その違いとは、「視野」です。

 

ゾーンに入る際には、ボールに集中するようにして視野を狭くしています。

 

このことによって深い変性意識(催眠)状態に入り、危険回避能力の回路を引き出し、潜在能力を高めています。

 

それに対して、頂点に立つ選手は、視野を広く持ち、相手をよく見て、適切なプレーを行なっています。

 

事実、この日本人プレーヤーは、この頂点に立つ選手に対しては勝率が圧倒的に低いのです。

 

おそらく、日本人プレーヤーがゾーンに入って視野を狭くしている死角を、頂点に立つプレーヤがうまく突くように攻撃できるからでしょう。

 

視野が狭くなる催眠状態になると観察力が弱くなり、相手の動きが見えにくくなります。

 

これがゾーンの弱点であり、この日本人選手が頂点に立っている選手に勝ち越せない大きな理由だと考えられます。

「脱力体」という選択

私が、以前ゾーンに入りやすかった理由は、呼吸法を行なっていたからでしょう。

 

呼吸法を行うことで意識を一点に集中させて深い変性意識に入り、腹斜筋が積極的に使われることで体幹部を過緊張させられるようになったからだと考えられます。

 

「ゾーン」に入ると、普段以上の力が発揮されるのは、

  • 体幹部だけを過緊張させてそれ以外の筋肉を弛緩させることで、体幹部だけを固定されて手足の力が抜けて体を動かしやすくなる

ことと

  • 大脳皮質前頭連合野の働きが抑えられるので、記憶した情報と動作を素早く取り出せるようになる

ことで、危機回避能力を引き出して爆発的な力を発揮できるようになるためです。

ですが、深い変性意識状態によって利用する能力は引き出せれても、それ以外の能力は極端に低下します。

 

例えば、ゾーンに入る場合、視覚の能力は格段に高まりますが、思考力、聴覚、体性感覚(皮膚や筋肉の感覚)が極端に弱まります。

 

特に思考力が弱まると、自身の記憶にある動作しか行うことができないため、相手が仕掛けた行動が記憶外の動作であれば対応できません。

 

身体の構造上、変性意識に深く入りにくい上に、

  • 身体を酷使する体的な弊害

  • 深い変性意識による心的な弊害

が伴ってしまいます。

【関連記事】瞑想の危険性(変性意識のリスク)

身体的な負担と精神的な負担を強いるとても危険なものです。

 

そして、ゾーンに入る選手は、常に故障を抱え、現役生活も短い傾向にあります。

 

ゾーンによる身体動作は、あくまでも危険を回避するための最悪な状況下で行うべき能力であり、多用は禁物です。

 

このような理由から、「ゾーン」は入らないことに越したことはありません。

 

ただ、スポーツ界は、深い変性意識状態に入りやすい人が多く、上位を深い変性意識で固めていそうです。

 

さらに上位に、究極の変性意識状態「ゾーン」に入りやすい人が占めています。

 

ですが、その頂点に立つ人は、ゾーンではない視野の広い「脱力体」を身につけた人であると考えています。


頂点にいる選手は、例外なく広い視野を持ち、観察力が高く、それに基づく予測能力に長け、状況に合わせて柔軟に対応できる人たちです。

 

このような形でプレーができれば、身体に負担を強いることが少なくなります。

 

なので、長く現役を続けている人が多いのも大きな特徴です。

 

このように書くと、「脱力体」は各分野の頂点に立つものしか得られないものだと思われるかも知れません。

 

しかし、そうではありません。

 

「脱力体」は頂点に立つ者も専売特許などではなく、人の持つ本来の姿なのです。