その理由は、全ての身体動作は背骨を軸に行われているからです。
手を動かすにしても、足を動かすにしても、全ての動作は背骨からはじまります。
しかし、人の認識はそうではありません。
手を動かす時には手に意識が優先し、足を動かす時には足に意識が優先し、道具を使う時には道具に意識が優先します。
そうしなければ、何も行えなくなるからです。
仮に、手足を動かそうとしたり、道具を使おうとする時に背骨を頑張って動かしても、うまく動かすことなどできません。
しかし、実際は、背骨を起点にして、手足を動かしているのです。
このような、実際の動作と認識との違いは、どうして起こるのでしょうか?
背骨の動きを優先する理由
これは、脳の性質によるものです。
手や足、あと道具などを動かす時の運動の指令は、大脳皮質の運動野というところで処理が行われるため、認識することができます。
それに対して、背骨など体幹部を動かす時の運動の指令は、小脳や脳幹というところで処理が行われるため、認識することができません。
もし、姿勢を制御する機能がなければ、何を行うにしても転倒し、歩くことや手を使って作業することはもちろん、立ったり、座ったりすることもできなくなります。
このように、人は小脳や脳幹によって背骨などの体幹部の骨をコントロールして姿勢を制御しています。
もし、小脳や脳幹などの中枢が正常に機能していても、背骨の動きが悪ければどうなるでしょう?
姿勢の制御がうまく機能できなくなります。
脱力クリエイトが背骨の動きを優先して考えているのは、そのためです。
背骨の動きを悪くする体の歪み
背骨の動きを悪くしている要因となるのが、体の歪みです。
体の歪みによって、背骨が歪むとどうなるでしょう。
背骨の動きが悪くなります。
なので、体の歪みを良くすることが最優先になります。
ですが、体の歪みの原因となるのが「日常生活を記憶する脳のプログラム」です。
そこが厄介なところで、本質的に体の歪みをなくそうとするならば日常生活の記憶自体を消去しなければならなくなります。
もちろん、そのようなことは不可能ですが、仮にそのようなことができたとしたら、大変です。
何か動作を行うたびに、覚え直さなければならなりません。
日常生活の記憶を留めるために体の歪みを作っているということになります。
ですが、体の歪みが強くなり、固定化されてしまうと厄介です。
年齢とともに、
- 肩が凝りやすくなったり、
- 腰が痛くなったり、
- 五十肩になったり、
- 腱鞘炎になったり、
- 膝痛になったり、
- 関節の変形を起こしたり
しやすくなるのは、体の歪みの固定化が原因です。
しかし、体の歪みを認識することはできません。
大脳皮質では、体幹部の動きを認識できないからです。
なので、体の歪みによって加齢による不調が起こっているなんて想像することができないのです。
背骨をコントロールする身体的メリット
ですが、悲観することはありません。
大脳皮質でも体幹部の動きを制御できるからです。
大脳皮質の中にも体幹部の動きを制御する領域があります。
ですが、手や足、顔よりも狭く、多くの人はその領域を使用できていません。
脱力クリエイトが行う身体軸のエクササイズは、この体幹部の領域を利用するためのエクササイズです。
そうすれば、背骨の動きの制御を小脳や脳幹に依存しなくてもすみ、意図的に制御することも可能になります。
ということは、意図的に体の歪みも改善できることになります。
意図的に体の歪みを改善するためには、背骨の位置をコントロールするスキル(能力)が必要です。
そのスキルを身につけることができれば、痛みや不調の改善はもちろん、手や足の動きが良くなり、道具の使い方もうまくなります。
それには3つの理由があり、
- 肋骨(肋椎関節)の動きが良くなる
- 骨盤(仙腸関節)の動きが良くなる
- 神経の伝達が良くなる
ことが挙げられます。
肋骨の動きが良くなる
背骨と肋骨との関節(肋椎関節)の動きが良くなることで、
- 背骨と腕
- 頭蓋骨と顎
との連動運動が良くなります。
このことで、
- 腕の動きが良くなる
- 声の通りが良くなる
が良くなります。
なぜ、腕の動きが良くなるかと言いますと肋骨のまわりに肩甲骨がついているためです。
肋骨の上をスライドするように肩甲骨が動くのですが、動作に合わせて肋骨が僅かにズレることで肩甲骨の可動性が高まり、肩甲骨の動きが滑らかになります。
このことで、肩甲骨の動きが良くなり、肩甲骨に繋がっている腕の末端である手指の動きに反映されます。
【参考ページ】合気上げ
あと、声の通りが良くなる理由は、肋骨の動きが良くなることで呼吸をしやすくなるためです。
このことで、首の緊張が解け、顎を動かしやすくなります。
そうすると、楽に声が出せるようになります。
【参考ページ】ダブル共鳴
骨盤の動きが良くなる
背骨と腸骨(骨盤の側面の骨)との関節(仙腸関節)の動きが良くなることで、背骨と脚との連動運動が良くなります。
これは「脚の動きが良くなる」ことを意味します。
この理由は、腸骨には大腿骨がついており、腸骨と大腿骨との関節が股関節です。
股関節は、球状の関節で可動性が高い関節です。
背骨と腸骨の間にある仙腸関節が僅かにズレることで股関節の可動性が高まり、大腿骨の動きが良くなります。
このことで、大腿骨に繋がる膝関節、足関節の動きが良くなり、足を動かしやすくなります。
【参考ページ】瞬間動作
神経の伝達が良くなる
脊髄は、脳からつながる神経の束で、脳から末端の司令、末端から脳への刺激情報を送るために重要な器官です。
脊髄が圧迫がなくなることで神経の伝達が良くなります。
この理由は、脊髄が背骨の後ろを通っているためです。
このことで、感覚神経と運動神経の伝達が良くなります。
この結果、感覚が鋭くなり、運動神経が高まり、手足の動きも良くなります。
【参考ページ】脱力トレーニングとは
背骨をコントロールする精神的メリット
背骨をコントロールすることで、心理的にもメリットがあります。
それは、自律神経のバランスが整うと言うメリットです。
もし、背骨の歪みが強いと、内臓の働きを弱めてしまいます。
その理由は、背骨の横を通る交感神経が常に刺激されてしまうからです。
このことで、自律神経のバランスを崩してしまいます。
逆に考えると、背骨の位置を整えるようにコントロールすることで、交感神経を過剰に刺激しなくて済むようになり、自律神経のバランスも整い、内臓の働きも良くなります。
そうすると、以前より弊害を唱えている変性意識に陥る心配もなくなります。
【関連記事】脳のバグ(誤作動)を起こす変性意識
また、内臓の働きが良くなると、脳と内臓とのネットワークも活発になり、脳の働きも活性化されます。
このことが、背骨をコントロールする精神的なメリットです。
背骨の位置をコントロールする最大のメリット
背骨の位置を整えることの最大のメリットは、脱力しやすくなると言うことです。
背骨は体幹の中心にあり、上半身は背骨で体を支える形になります。
それをサポートしているのが、肋骨であり、骨盤です。
ただ、腹部には骨がないので、腹横筋という腹筋のインナーマッスルが連動することで背骨をサポートしています。
その関係から、全身の骨の垂直抗力が背骨の周りを通るのが理想です。
それは、全身を骨で支えることができるためです。
ですが、体が歪むと垂直抗力のラインが背骨からズレてしまいます。
そうなると、筋肉で体が傾くのを支えなければなりません。
それが俗にいう「力み」です。
筋肉が体を支えるために使われてしまうと、体を動かしにくくなります。
なぜかと言いますと、筋肉は体を動かすためのものだからです。
垂直抗力のラインが背骨の周りを通っていると骨で体を支えることができるので、筋肉で体を支える必要がなくなります。
そうすれば、筋肉は骨を動かして体を動かすという本来の仕事ができるようになります。
脱力に身体の調整が必要なのは、そのためです。
そして、垂直抗力のラインを背骨に通すように制御するのが「身体軸」なのです。