セルフ調整法をお伝えする仕事に携わって約8年となり、その間、さまざまな方へ調整のアドバイスと脱力のナビゲートを行なってきました。
多くの方にセルフ調整や脱力トレーニングについての記事を読んでいただき、関心を持っていただく方からお問い合わせいただいております。
元々、指圧の仕事やリハビリの仕事をしていた関係もあるからなのか、お問い合わせいただくきっかになっているのが「痛みや不調」によるものです。
今は整体も行なっておりますが、立ち上げ当初は、セルフ調整と脱力トレーニングのみを行なっていました。
それにも関わらず、手技を使わずに痛みや不調の改善に貢献してきました。
痛みや不調を改善するためには施術が当たり前のように思われていますが、適切なアドバイスを行うことができれば、手技など必要ないことを証明してきました。
現在オンラインレッスンを受けていただいている方も、痛みや不調がきっかけで受けていただいた方がほとんどです。
実際、オンラインレッスンでも痛みや不調が改善されています。
そもそも、このようなセルフ調整法を確立した経緯は、
「自身の身体を調整する方法を見つけたい」
というところからでした。
それ以前から、呼吸法や丹田法、脱力動作法や筋トレやストレッチなどを実践してきました。
しかし、自身の体の歪みを改善することは容易ではありませんでした。
私自身、一施術者として「自身の体の調整することが、施術の精度も高めることに繋がる」という考えから、セルフ調整法を構築するに至りました。
セルフ調整法を構築する過程で、体のバランスが整っていることを実感できるようになりました。
そして、今までになく体が軽くなる感覚を得ることができるようになってきました。
これが、本当の脱力(体の力を抜く)感覚であると気がついたのです。
セルフ調整法を続けているとやがて、天と地と自身とをつなぐラインを実感することができるようになりました。
これが、骨の垂直抗力のライン「身体軸」です。
【関連ページ】身体軸について
このような経緯があったため、大田式調整動作を立ち上げた当初は、
- セルフ調整法
- 呼吸
- 丹田
- 身体軸
- 実際の動作への活用
という流れで行なってきました。
この方法は、体の不調や痛みを抱えたの方にとって効果がありました。
しかし、中にはセルフ調整法によって「不安」や「恐怖心」を抱く人もいました。
このようなケースの方は、体の不調が少なく、当時のブログ記事に関心を抱いていただいた方でした。
どうしてなのか?と不思議でしたが、やがてある共通した特徴を見つけることが出来ました。
それが、
- 自己催眠
でした。
そこで、ワーク内容の見直しを行い、
- 身体軸
- セルフ調整法
- 丹田
- 呼吸
- 実際の動作への活用
という流れに変更し、現在に至ります。
大田式調整動作®︎を構築し、多くの方々を見てきた経緯から、脱力(体の力を抜く)妨げになる要因を見出すことが出来ました。
それが、
- 筋肉の張りのアンバランス
- 深い変性意識
の2つの要因だったのです。
筋肉の張りのアンバランス
多くの人にとって、身体軸を作ることは容易ではないかもしれません。
その理由は、腕や脚と体幹を繋いでいる筋肉の張りのバランスが崩れてしまっているためです。
このことで、背骨のアライメント(位置)がズレてしまい、身体軸を認識することを困難にしています。
そうなると、体のバランスを保つために、体の表層筋(アウターマッスル)を緊張させ続けてしまい、体の力を抜くことが出来ません。
体の緊張が解けない状態が続くと筋肉の伸び縮みがなくなり、血液の循環が悪くなり、これが、肩こりや腰痛、冷え性などの痛みや不調の原因になります。
腕や脚と体幹とを繋ぐ筋肉の張りのバランスを整え、背骨のアライメントを整えるために考案したのが、脱力調整法「大田式調整動作®︎」です。
大田式調整動作®︎は、肩関節まわりや股関節まわりのインナーマッスルにアプローチすることができるので、腕や脚と体幹とを繋ぐ筋肉の張りのバランスを整えることが出来ます。
継続して行うことで、背骨のアライメントが整い、垂直抗力のラインに背骨を合わせやすくなり、身体軸を作りやすくなります。
ただ、身体軸を作ろうとした時に、
- 筋が突っ張って痛む
- 体が歪んだ感覚がする
と言う場合があります。
これは、身体軸を作ることを体が否定している状態です。
このような感覚は、筋肉の張りのバランス、特に深層筋(インナーマッスル)の張りのバランスが崩れているケースで起こります。
ただ、このような感覚が悪いのではなく、自身の身体の認識が高まっている証拠です。
身体軸のワークを行う理由は、「垂直抗力のライン」というものがあり、それが背骨のまわりを通るのが「体本来の設計図」であることを知ってもらう意味で行ないます。
そのことを踏まえながらワークを行なっていくと、身体軸を作った時と、そうでない時とで体の感覚の差を認識しやすくなります。
その差を感じながら、セルフ調整で少しずつインナーマッスルの張りのバランスを整えていけばいいのです。
そうしていくうちに、背骨のアライメントが整い、垂直抗力のラインを実感できるようになっていきます。
どのみち、体は急には変えることは出来ません。
時間をかけて、歪みを改善し、背骨のアライメントを整え、身体軸を構築できれば大丈夫です。
なので、最初から身体軸を完成させる必要はありません。
垂直抗力のラインに背骨を合わせられるように体が動くようになれば、無意識のうちに入ってしまう「力み」が取れて、それと共に、体の痛みや不調も改善されていきます。
身体軸を作ることを目標としてセルフ調整を行なっていけば、体のバランスが整った状態を脳に記憶することが出来ます。
このことで、どのような動作を行なっても体のバランスを崩さない体の無駄な力が抜けた状態「脱力体」を得ることができるようになります。
その結果、不調や痛みに苛まれない身体を得ることができるようになるばかりか、
- 自身が持つ可能性を引き出すことができるようになる
- 年齢を重ねても新しいことにチャレンジすることができる
などの効果も期待できます。
自己催眠による深い変性意識
脱力(体の無駄な力を抜くこと)を妨げるもう一つの要因となるのが「変性意識」という意識状態です。
変性意識に陥ると体の歪みが強くなり、体の緊張が強くなる傾向があり、それに伴って心身にマイナスの作用が及ぼされます。
例えば、
- 体の痛みや不調
- 精神の不安定
など。
なので、基本的には変性意識に深くはまり込むことはありません。
ですが、ごく稀に、深い変性意識に陥ってしまう人もいます。
そのような方は、不思議と脱力感覚があり、痛みや不調、不安や恐怖に囚われない傾向にあります。
それは、身体軸を持った脱力感覚と類似した点です。
ですが、これらは似て非なるもの。
深い変性意識による脱力感覚は、身体感覚や負の感情に鈍感になる意識状態です。
それに対して、身体軸を持った脱力感覚は、身体感覚と感情に対する感覚を認識しながら、それらに囚われないという意識状態です。
私が、今までブログ記事で催眠や変性意識をテーマに多くの記事を書いたのも、変性意識状態に陥ることで、体の歪みを強くしてしまい、心身に悪影響を与えることを発信したかったためです。
催眠や変性意識について調べるようになったきっかけになったのが、知人がマインドコントロールをかけられたのも目の当たりにしたことでした。
【関連記事】身近に潜むマインドコントロールの罠
そこで行われていた技法が、身体操作を駆使した催眠技法だったのです。
その術者と催眠術にかけられた人を観察していると、体の重心が術者に引っ張られ、姿勢が崩れて、術者に意識が集まっていました。
これを見て、「マインドコントロールをかけられると体の歪みが強くなる」ことに気がついたのです。
マインドコントロールについて調べるうちに、催眠や変性意識という言葉を知ることになりました。
これが、催眠や変性意識について調べるようになった大きな理由です。
ちなみに、催眠とは「意識が狭窄した意識状態」のことを言い、変性意識の一種です。
【関連記事】催眠とは(意識を狭窄させる変性意識)
調べてみると、催眠は日常のさまざまな場面で起こっていることがわかり、人の持つ催眠の性質を利用したものに溢れかえっていることを知りました。
【関連記事】身近にある催眠
さらに調べるうちに、あることに気がつきました。
脱力(力を抜く方法)を謳う多くのワークに、変性意識を用いた自己催眠の技法が多く用いられていることに。
脱力クリエイトでは、変性意識に陥ると脱力する(体の力を抜く)ことが出来ないと提唱してます。
しかし、稀なケースですが、深く変性意識状態に陥ってしまうと脱力感覚を得ることができるようになります。
【関連記事】究極の変性意識「ゾーン」(身体を犠牲にして得られるもの)
これは、このような原理です。
深い変性意識状態に陥る時
「身体は深層筋(インナーマッスル)を過緊張させて体が安定するような歪み(背骨の捻れ)を作って体を支えることができる」
と考えられます。
そして、深い変性意識に陥っていまうと、感覚が鈍麻するため体幹の深層部の感覚を得ることが出来ません。
そのため、インナーマッスルの過緊張を感じられなくなります。
また、心理面でも不安や恐怖といった負の感情を感じなくなります。
これは、ドーパミンという脳内ホルモンが過剰に分泌されるためで、精神が高揚し、不安や恐怖といった負の感情が麻痺している多幸感という感覚です。
体の歪みを強くすることで身体を安定させ、負の感情を感じないので、安心して表層筋(アウターマッスル)の緊張を解くことが出来ます。
これを「脱力(体の力を抜く)」ことだと捉えているのでしょう。
【関連記事】深い変性意識における脱力(意識の狭窄による感覚の鈍麻)
さらに、自己催眠には変性意識を深くする作用があります。
そのため、日常に自己催眠のワークを取り入れている人は、ドーパミンによる強い興奮状態を快感に思い、深い変性意識状態にハマってしまう傾向があります。
一見すると、身体軸によって得られる脱力感覚と似ているため、一時期は自己催眠を行なっている方からの問い合わせもありました。
ですが、そのような方が大田式調整動作®︎のセルフ調整法を行えば、インナーマッスルの過緊張が一気に解け、体の捻れが解けてしまいます。
そうなると、体の支えがいきなり失くなってしまい、アウターマッスルの緊張、俗に言う「力(りき)み」を強めてしまいます。
そして、緊張によって自己催眠によって抑えつけられていた負の感情が一気に甦り、精神的に大きな負担を強います。
これが、不安や恐怖心という負の感情を強く抱いてしまう要因になります。
そうなると、脱力トレーニングを継続することが難しくなります。
だからと言って深い変性意識に陥ったドーパミン過多の状態が続いてしまうと内臓を疲弊させ、心身に大きな弊害をもたらしてしまいます。
【関連記事】自己催眠の危険性
なので、変性意識からは、いち早く脱却するべきです。
その弊害を、少なくするために身体軸を作ることが必要だと考えました。
もし、自己催眠系のワークを行なっている人が「大田式調整動作®︎を覚えたい」と思うのであれば、身体軸のワークは習得しやすいかもしれません。
深い変性意識に陥った人は、アウターマッスルの力が抜けた感覚を知っているためです。
身体軸を認識できれば、深い変性意識に陥った人でも体の支えを失うことはありません。
昔の宗教などの修行においては、意図的に深い変性意識に追い込んでいました。
そこから脱却することを昔の人は、
- 開眼する
- 悟りを得る
などと言っていたと思います。
その鍵を握るのが「身体軸」だったのです。
ですが、このような方法は、とても危険な行為です。
なので、心身の安全を図るために、最初に「身体軸」を知り、認識することが必要だと考えました。
そうすれば、身体軸が体を支えてくれるので、セルフ調整による筋肉の過緊張と負の感情による過緊張を防ぐことが出来ます。
だからと言って、今まで培った体の捻れは簡単に取ることはできません。
そして、体の捻れが解ける共に、体の不調が表れたり、負の感情に苛まれることもあるかもしれません。
ですが、負の感情は悪者ではありません。
むしろ、自身の身を守るために必要な感情です。
悪いとすれば、負の感情に囚われてしまうことです。
本来、負の感情は時と共に薄らぎ、次第に昇華されるものです。
ですが、変性意識によって負の感情が増大したり、自己催眠によって封印されてしまうと昇華することが出来なくなります。
言うなれば、心の借金(負債)を増やすことでもあります。
もし、負の感情に苛まれたとしても、身体軸があれば不調や負の感情を素直に認め、そして、囚われないようにすることも出来ます。
そうすれば、深く陥ってしまった変性意識からも脱却することが出来ます。
どのような状況でも、心のバランスを崩さない無駄な力が抜けた状態「脱力体」を得ることができるようになります。
このことで、心から安心できる強い精神を得ることができるようになります。