脱力系身体操作は、不可思議なものが多く、あたかも達人技かのように思われるかもしれません。
例えば、
- 合気上げ
- 膝抜き
- 寸勁
や
- 立ち関節技で行う崩しの技法(合気下げ)
- 折れない腕
- 持ち上がらない身体
など。
だが、身体操作法自体は、普段何気ない動作の延長線上にあるため、それほど難しくはありません。
むしろ、武術のパフォーマンスの多くは、脱力さえできれば誰にでもできるものばかりです。
なぜかと言いますと、これらは人が持っている本来の能力だからです。
ただ、人は何かを行おうと思った途端、無意識のうちに力が入ってしまいます。
これが、意図的に脱力することの難しさです。
そもそも、脳の性質上、意図的に脱力することは、とても困難です。
これが、脱力系身体操作を実際の動作で使うことが難しい理由です。
なので、脱力系身体操作もパフォーマンスでのみ成立するものだと考えます。
それが故に、実際の動作に反映させられないのです。
【関連記事】身体操作を仕事やスポーツに活用する試みについて
そして、この平和な世の中に、人を殺傷するための技術を突き詰めるのはナンセンスです。
それよりも、正々堂々とルールに基づき競い合うスポーツの方が、生きてゆく上での教訓や精神性を養うことができると思います。
ですが、武術のパフォーマンスには、スポーツにはない価値があると思います。
それが、
- 合理的な体の使い方を知る
ことと
- 人の持つ先入観や思い込みを払拭する
ということです。
例えば、
- 合気上げでしたら、物を持ち上げる動作
- 膝抜きでしたら、力まない歩き方
- 寸勁でしたら、引き戸の開け方
- 立ち関節技で行う崩しの技法でしたら、物や道具の掴み方
- 折れない腕でしたら、腕の使い方
- 持ち上がらない体でしたら、腰に負担のかからない動作
などに活用できます。
これらのパフォーマンスは、一見すると「こんなことできない」と思ってしまいます。
このような
- 思い込み
- 先入観
に支配されることで、思考が停止し、体が固まってしまうのです。
これは、一種の催眠状態です。
このような心理状況というのは、無意識のうちに筋肉を緊張させ「力み」を生み出しているのです。
そのような状態では、脱力した動作を行うことができません。
【関連記事】脱力を邪魔する二つの要因(筋肉のアンバランスと変性意識)
なので、最初にこれらのパフォーマンスの原理を説明していきます。
そうすれば、思い込みや先入観を払拭することができ、体の力を抜きやすくなります。
その後で、合理的な体の使い方を覚えて、実践していただくと、すぐにできるようになります。
これらのパフォーマンスを実践していただくことで、
- 先入観
- 思い込み
によって、知らず知らずのうちに力が入ってしまっていることを知ることができます。
武術的なパフォーマンスは、元々、集客のための催眠技法でした。
【関連記事】身体操作という催眠術(合気上げ・膝抜き・寸勁)
逆に、
- 先入観
- 思い込み
という催眠状態を解くための手法として活用することができると考えます。
武術的パフォーマンスである
- 合気上げ
- 膝抜き
- 寸勁
- 折れない腕
- 持ち上がらない体
などのパフォーマンスを通して、先入観や思い込みを払拭できると分かれば、日常生活で多くの思い込みは先入観に囚われていることに気づくことができるようになります。
そして、思い込みや先入観に囚われないためには「脱力体」が必要なことを認識することもできるでしょう。