前回の続きです。
常に背筋を伸ばすことを意識して、決して猫背にならない。
しかし、猫背の姿勢の方が手を用いた動作をしやすいというのも事実です。
だが、それでも猫背はおすすめいたしません。
では、どうすればいいのでしょうか?
猫背の姿勢の方が手や指を動かしやすい。
それには理由があり、
猫背の姿勢をとると、肩甲骨が前の方にスライドしやすくなるからだ。
そうすると、体の前方で手を使いやすくなる。
ゆえに腕や手の動きが円滑になるのだ。
しかし、猫背の姿勢には深刻な問題がある。
それが、肩甲骨と腰椎との連動性である。
肩甲骨を前に出すと脊柱(背骨)は丸まってしまう。
これが、猫背の姿勢だ。
何が問題なのか?
背骨が丸まることは、心身の不調を引き起こしてしまう恐れがある。
例えば、
- 肩が凝りやすくなる
- 腰痛に悩まされる
- ぽっこりお腹になる
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内臓の働きが悪くなる
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内臓が下垂して、骨盤下部の内臓が圧迫される
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自律神経の乱れ
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精神の不安定
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ネガティブ思考
など。
そのため、猫背の姿勢をし続けることには避けたい。
また、猫背の慢性化によって、骨粗鬆症になる恐れも懸念される。
なぜならば、骨に刺激を与えられにくくなるからだ。
骨を作る骨芽(こつが)細胞は、ある程度の刺激を与えなければ作られないという性質がある。
猫背のように背骨が丸く曲がると歩いたりした時に生じる衝撃が背骨に与えることができなくなる。
背骨は、背筋や腹筋が働かなくても立てられるようになっている。
それは、背骨には強力な靭帯が伴っているためだ。
しかし、その状態では背骨が丸まってしまう。
そう、猫背の姿勢だ。
そうなると、腹筋や背筋が衰えてしまい、背骨をまっすぐ(正確には適度なS字湾曲)を保ことができなくなる。
このことで、背骨に体重(正確には頭の重み、胸郭の重み、腹部内臓の重み)がかからなくなり、骨に負荷がかからなくなる。
この状態で、歩いても、歩くことによって生じる衝撃が背骨にうまく伝えることができず、全身の骨芽細胞が働きにくくなり、骨が脆くなる。
これが、骨粗鬆症の原因の一つだ。(そのほかにも、ホルモンの分泌や栄養の関係などもあるが、ここでは割愛する)
このように、慢性的な猫背にはいくつものデメリットがある。
よく「健康のためにウォーキング」と言われるが、猫背の姿勢では健康には貢献しにくいだろう。
もちろん、やらないよりは良いのは確かだ。
しかし、
-
ウエストダウン
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体を引き締めたい
-
ダイエットしたい
という願望を叶えることはできないだろう。
その理由は、前述したように、腹筋と背筋の力が衰えてしまうからだ。
そして、背骨がまっすぐな状態(適度なS字湾曲)を維持できなければ、股関節主導の動作が行えない。
そうなると、スタイルUPのために必要となる大臀筋、中臀筋、小臀筋などの臀筋群(お尻の筋肉)と腸腰筋(ももを上げる筋肉)、腹横筋(おなかを支える筋肉)などが働かない。
そのため、歩幅が小さくなり、全身の筋肉の約6割とも言われる足腰の筋肉が刺激されず、代謝が落ち、脂肪を燃焼しずらい。
それがゆえに、おなかについた脂肪は無くなることはない。
「おなかを引っ込めよう」と頑張って腹筋運動を行なっても功を奏さないのは、そのためだ。
では、これらの筋肉を働かすために必要なこととは?
答えは、肩甲骨を後ろに引くことである。
猫背の姿勢とは逆に、肩甲骨を後ろに引くと腰椎は前弯する。
そうすると、立ったり歩いたりする時に背骨がまっすぐになりやすくなる。
ただし、腰の反りすぎる反り腰には注意が必要ではあるが。(反りすぎて背骨がまっすぐにならないからだ)
そう、立ったり歩いたりする時には肩甲骨が後ろに引けた状態が最適なのだ。
しかし、肩甲骨を後ろに引いた姿勢を取り続けることは非現実的である。
なぜならば、手や指を動かすために肩甲骨を前に出す必要があるからだ。
日本人は、他の国の人たちよりも手先が器用な人が多いと言われるが、これは民族的に猫背の姿勢の人が多いことと無関係ではないだろう。
だが、それによる外見的な特徴として揶揄されることも多いと聞く。
私は、肩甲骨を前にでも後ろにでも自在に動かせる身体が理想なのではないかと考える。
具体的に述べれば、腕を動かす動作は、肩甲骨が前にスライドすることが肝となる。
逆を言えば、肩甲骨が前にスライドさせることができれば、猫背の姿勢を取る必要がない。
そう、背筋を伸ばしながら肩甲骨だけ前にスライドさせれば良いのだ。
そうすれば、体にかかる負担も軽減できた上に、手の動きも円滑になる。
このような姿勢のことを、中国武術では含胸抜背と言うそうだ。
背筋を伸ばす、正確には胴体を伸ばす姿勢をとり続けるメリットはいかなる動作においても最善な姿勢を取れるように調整できることである。
そうすれば、いかなる動作にも対応しやすくなる。
だが、手仕事に限らず、特に道具を使うスポーツを行う人にも猫背の人が意外に多い。
逆に手を使わないスポーツを行っている人は猫背の人は少ない。
行っているスポーツに最適な姿勢を脳が記憶しているためだ。
しかし、異なる動作を行う際にも姿勢が最適化されないのには、問題がある。
それが、職業病やスポーツ障害だ。
このような、故障を抱えている人は例外なく姿勢の固定化が進んでいる。
加齢と共に多くの経験を得られる反面、それを体現するための身体を喪失してしまう。
これらが、加齢と共にパフォーマンスを落とす大きな原因となのだ。
そして、歪みの固定化によって姿勢が固定化されてしまう大きなデメリットは、新しい技術を習得できなくなるということだ。
それを行うためには、柔軟性のある体幹が必要だ。
だが、誤解しないでほしい。
ここで言う柔軟性とは、背中を大きく反らしたり、開脚ができることではない。
もちろん、そのような柔軟性も大切ではある。
だが、ここで言う柔軟性とは背骨や肋骨といった体幹部の骨が細やかに動くことを意味している。
体幹を細やかに動かすためには、身体のバランスが整っていることが必須である。
私が、当ブログで強調している身体調整の意義とは体幹が細やかに動かすために他ならない。
そのことが、不調の改善、メンタルケア、ダイエット、アンチエイジング、パフォーマンスUPへとつながるのだ。
一見すると、これらのことは全く違うことのように思われる。
実際に、それが世間一般の認識であろう。
そのため、多くの商売やビジネスが氾濫している。
体の不調であれば、
- マッサージや整体
- 健康食品
メンタルケアであれば、
- カウンセリングやコーチング
- 自己啓発
- スピリチュアルや占い
ダイエットであれば
- ダイエットサプリ
- エステや整体
アンチエイジングであれば、
- 健康食品
- 化粧品
パフォーマンスUPであれば、
- ボイトレ
- 古武術
もちろん、これらのものが全て無駄だというつもりはない。
だが、身体の原理を知れば、多くのビジネスで謳われていることが、大きく誇張されて宣伝されていることに気づくだろう。
体幹部の骨(肋骨や背骨)の動きを良くすることで様々な効果が表れます。
人間も動物なので、特定の動作に偏らず、体を満遍なく動かすことが大切だと言えます。