人の体は、使わなければ機能が低下します。
これを廃用性萎縮と言います。
生命活動を維持するためには、エネルギーが必要です。
そのため、使わない機能を維持させようとはしない。
筋肉も例外ではなく、加齢とともに萎縮して固くなっていきます。
若いうちは、維持するためのエネルギーが多いためなのか?運動しなくてもゆっくりと萎縮します。
しかし、歳を重ねるごとに、そのスピードは早まるように思われます。
あと、食事の志向も脂っこい肉食中心からあっさりした菜食寄りになり、食事量も減りがちになる。
このことも筋肉の萎縮の要因なのかもしれません。
そのため、ある程度の年齢になったら努めてタンパク質を摂り、筋肉に刺激を与えるように努める必要になってきます。
いわゆる筋トレです。
ただ、タンパク質の摂りすぎてしまうと肝臓や腎臓に負担がかかると言われています。
その上、腸内環境も悪くなってしまいます。
ですが、多くの人はタンパク質の摂取量は不足気味なので過剰摂取を気にする必要はないと思います。
私は脱力トレーニングを推奨していますので、筋トレを否定していると思われているかもしれません。
むしろ筋肉に刺激を与えるべきだと考えています。
なので、体の衰えを感じてきたのであれば、筋トレは有効だとのが私の見解です。
これは、リハビリの仕事を通して筋力低下による弊害は強く認識しているためです。
萎縮が強くなってからの筋力強化はほんと大変です。
筋肉の萎縮によって関節を痛めやすくなり、高齢者のリハビリでは膝関節の炎症を起こさせないようにする必要があります。
なぜならば、炎症を起こしてしまうとADL(日常生活動作)向上のための機能訓練を行えなくなるからです。
例えば、立ち上がりの訓練だったり、歩行訓練などがあります。
しかし、リハビリでどのように気をつけていても車椅子への移乗などの際に膝をひねって炎症を起こしてしまうこともあります。
そうなってしまうと、ADL訓練が制限されてしまい、萎縮を助長させてしまいます。
だからと言って絶対安静にしてしまっても萎縮を強め、筋力低下ばかりか関節の萎縮まで起こってしまいます。
そうなってしまうと、とても厄介です。
そのため、関節に負担をかけずに膝の関節を動かす必要があり、そのようなリハビリのスキルも習得しました。
そして、膝の回復を早める手技も習得していきました。
このような話は、一般的な常識では想像できないと思います。
ですが、老化によって著しく衰えた人体の成れの果てであり、誰しも避けて通れない現実なのです。
このようなことをできる限り防ぐべきです。
そのために、筋トレが必要となるのです。
でも思い返せば、私も若い頃は、筋トレに対しては否定的だったかもしれません。
機能訓練などの筋力強化は必要だと認識していても、日常生活を問題なく過ごせるだけの筋力があれば必要ないと思っていた感はあります。
ですが、私自身、加齢と共に、筋力をはじめとする身体機能の衰えは実感しています。
なので、今は程度に負荷をかける筋トレは行うようになりました。
ですが、何事も適度が大切。
過度な筋トレには弊害があることが知られています。
その弊害に、動脈硬化を引き起こしやすくなるというものがあります。
最近の研究で、筋トレの後に生じる血管内皮機能の低下が見られることが確認されています。
血管内皮機構とは、血管を正常な状態に保つ働きのことです。
血管内皮機構が低下した状態(血管が硬くなる状態)が長期間続くと動脈硬化を促進させると恐れがあるそうです。
筋トレの習慣によって、身体が血管内皮機構を低下させるように適応してしまったからでしょう。
逆に、血管内皮機構を改善し、血管を柔らかくするのがウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動だそうです。
このことから、筋トレの後に有酸素運動を行うことで血管内皮機構を改善させるという研究結果が報告されています。
参考記事
HOUSEI PHRONESIS「血管に優しい筋トレの方法とは?(スポーツ研究センター 森嶋 琢真 特任・人気付講師)
https://www.hosei.ac.jp/info/article-20231127105300/?auth=9abbb458a78210eb174f4bdd385bcf54
では、なぜ筋トレによって血管内皮機構が低下するのか?については上の記事では明記されていませんでした。
ここで、その原因について私なりの仮説を述べていきたいと思います。
筋トレをしようとする人は、高い負荷をかけて息を止めて、力んで行います。
その方が、力を出しやすいからです。 人は、大きな力を出そうとする時、息を止めます。
筋肉には、速筋(白筋)と遅筋(赤筋)の2種類の筋肉があります。
速筋は瞬発的に大きな力を出すことに優れ、遅筋は大きな力を出せないが繰り返しても疲れにくいという性質があります。
そして、遅筋は酸素を必要とし、速筋は酸素を必要としません。
速筋を働かせやすくなるのは息を止めた状態なので、大きな力を出そうとすると無意識のうちに息を止めようとするのでしょう。
ですが、息を止めると血圧が上がってしまいます。
おそらく血液を筋肉に届けるために血圧を上げる必要があるからだと考えられます。
過度な筋トレが習慣化されることで体は、いつでも血圧を高めて過度な負荷をかけられるように、体が待機しています。
そのためには、血管を固めたほうが都合が良いからです。
血管を固めなければ、血圧を上げようとしても血圧を上げることはできません。
例えば、ゴム風船に大量の水を入れると膨らみます。
この時、ゴム風船の中の水圧はほとんど変わりません。
膨らむことで、容積が大きくなる分、水圧が上がらないからです。
それに対して、固い容器に水を入れても膨らみません。
しかし、固い容器に詰め込まれた中の水圧は高くなります。
なぜならば、容器の中に多くの水が入ろうとするがギュウギュウ詰めになり水が圧縮されるからです。
例えるならば、列車の中に多くの人が入っている満員列車のような状態です。
一時的に血管を固めようとしてしまうのは、血管を硬くして血圧を上げようとするためです。
そうすると、血液を早く筋肉へ届けることができるようになります。
過度な筋トレを継続することによって、常に血管が固くした状態が続く。
このことが、動脈硬化のリスクを高める要因だと考えられます。
上記に示されている研究結果は、筋トレを終えた後に血管を固め続ける習慣をリセットするためのものだと言えます。
これから、私の筋トレに対する考え方を述べていきます。
筋肉は負荷をかけなければ強くはなりません。
しかし、必要のない筋肉まで収縮させる必要もありません。
私がスポーツジムでよく見かけるのが、息を止めて顔を真っ赤にして、体を歪ませて筋トレを行なっている光景です。
力んでいるので、やっている当人はやっている感が強く、達成感も強いのかもしれません。
ですが、それは当人の自己満足であり、筋力の向上にもパフォーマンスの向上にも、スタイルUPの効果もありません。
筋トレをして成果を出したいのであれば、力まずに行うことです。
力まずにといっても、負荷をかけなければ意味はありません。
ですが、過剰の負荷は禁物です。
意識するべきは、大きな負荷よりも、正確な動き。
自身の許容範囲を超えた負荷で行おうとすると、力みによって鍛えたい筋肉に正確にアプローチすることができません。
そう、なるべく正確な動きを行った上で負荷をかけていく。
そのためには、不必要な「力み」が大敵です。
そう、筋トレにも脱力トレーニングの考え方が必要なのです。
では、どのように筋トレを行えば良いのか?
次回は、筋トレについての見解を書いていきたいと思います。