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新しいカタチのストレッチ②(筋トレとの融合)

前回の記事の続きです。 

 

静的なストレッチには、可動域を広げることはできないと前回の記事で述べました。

 

その理由は、伸張反射が働き、かえって緊張を強くするためです。

 

では、どのようにすれば可動域を広げることができるのか?

 

その前に、伸張反射について述べていきます。

ストレッチのためにはデメリットな伸張反射ですが、身体動作においては重要な働きを行なっているのです。

 

なぜならば、人の動作は例外なく伸張反射を用いて行われているからです。

 

特に、流れるような動作(フォームの綺麗な美しい動作)には、例外なく伸張反射が巧みに利用されています。

 

自らの意思で収縮させるよりも、反射を利用した方が反応が早く、連動させた動作が行いやすいためです。

 

流れるような洗練された動作というものは、伸張反射を上手く活用するために反復練習を行なってきた成果とも言えます。

 

その結果、その動作が脳に強く刻み込まれたと言えます。

 

ということは、脳に動作を記憶される際に、伸張反射が用いられていることが前提になっているとも考えられます。

 

言い換えると、記憶している動作以外の動きをしようとすると伸張反射を起こしてしまうということです。

 

例えば、前屈をして前に倒したとします。

 

伸ばした指や手首が地面につけば「体が柔らかい」と言い、地面につけることができなければ「体が硬い」と言われます。

 

しかし、そうではありません。

 

前者は、前屈の動作を行う際に、脳が前屈の動作を記憶しています。

 

そのことで、拮抗筋であるハムストリングスの伸張反射が起こりにくくなります。

 

それに対して、後者は前屈の動作を記憶されていません。

 

そのため、拮抗筋であるハムストリングスの伸張反射がすぐに起こり、ハムストリングスが収縮させてしまいます。

 

覚えている動作であれば伸張反射を起こしません。

 

しかし、そうでない動作の場合、すぐに伸張反射を起こしてしまいます。

 

なぜならば、脳に記憶されていない動作では相反抑制が働かないためです。

 

※相反抑制とは、主動作筋が働く際に、反対に位置する拮抗筋の働きを抑制する働きのこと。

 

そして、相反抑制が働く限度を超えた時に伸張反射が働き、拮抗筋(この場合はハムストリングス)が収縮します。

 

前屈がうまくできる人は長く相反抑制が働き、そうでない人は短い間でしか相反抑制が働かないことになります。 

言い換えると可動域を広げるためには、相反抑制が行われる範囲を広くすることが必要だということになります。

 

そのために、その動作を脳に記憶することです。

 

では、どのようにして脳に記憶するのか?

 

結論から言えば「主動作筋を収縮させるようにする」ことです。

 

例えば、ハムストリングスのストレッチをしようとしましょう。

 

その時、主役となる筋肉はハムストリングスでしょうか?

 

いいえ。

 

ハムストリングスを主役にしようとするから伸張反射が強く働くのです。

 

ストレッチの誤解は、拮抗筋(ここではハムストリングス)を動作の主役にしようとすることです。

 

膝を伸ばそうとする動作で考えるならば、膝を伸ばすために使う筋肉を主役にしなければなりません。

 

ここでは、主動作筋は大腿四頭筋(モモの前の筋肉)であり、ハムストリングスは拮抗筋に当たります。

 

あくまでも動作の主役は主動作筋(ここでは大腿四頭筋)です。

 

言い換えると、ハムストリングスを伸ばそうとするのではなく「膝を伸ばそうとする」という意識で行うということです。

 

そうすれば、膝を伸ばす筋肉(大腿四頭筋)が上手く働いてくれます。

 

そうすると、拮抗筋であるハムストリングスに相反抑制が働き、ハムストリングスの緊張が解けていきます。

 

言い換えるならば「力を入れてストレッチ」をする。

 

これが、脳に記憶するための方法だったのです。

 

もちろん、脳に刻み込むには時間がかかります。

 

なので、膝を伸ばそうとすると拮抗筋であるハムストリングスも伸張反射によって同時に収縮してしまいます。

 

その間、脱力とは相反の関係にある「力み」の状態になります。

 

しかし、動作を脳に刻み込むためには「力み」が生じる必要があるのです。

 

新たな神経回路を構築する際に必要だからです。

 

拮抗筋の伸張反射に対抗するように主動作筋を働かせることで、徐々に脳に動作を刻み込むことができます。

 

ということは、「力み」も必要ということです。

 

脱力トレーニングを提唱していますが、それはあくまでも身体調整によって脱力した状態を記憶することを意味しています。

 

そうすれば、無駄な「力み」と有効な「力み」との区別がつくようになります。

 

無駄な「力み」とは、身体の構造に反する「力み」です。

 

それに対して、有効な「力み」とは身体の構造に適した「力み」です。

 

このような、有効な「力み」は体の柔軟性を高めるのと同時に、筋力の強化にもつながります。

 

そう、筋トレとストレッチを融合させる「新しいカタチのストレッチ」を構築することができるのです。

 

次回の記事で「新しいカタチのストレッチ(動作習得への応用)」について書きたいと思います。