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健康といえば食べ物
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心についてはありがたい言葉
- 肩こりや腰痛は整体
- パフォーマンス向上にはトレーニング
というのが一般的な考えだと思います。
ですが、肩こりや腰痛、パフォーマンス向上はもちろんのこと、健康や心の問題も地球の重力の働きに大きく影響を受けているのです。
なぜならば、人の身体は地球の重力を使うことを前提に作られているからです。
身体を動かすことについては重力の働きが影響することをイメージしやすいかもしれませんが、食や健康、心のありようが重力と関係しているなんて思いもしないでしょう。
重力との関係性を築き、重力とうまく付き合うことができれば、健康を害しにくくなり、精神的なストレスは緩和され、ストレスを自身の力に変えることもできるようになります。
このことで、快適な生活を送ることができるようになります。
では、重力との関係性を築くためには、どのようにすればいいのでしょう?
そのためには、身体のバランスを整えること。
このことが重要なカギとなります。
ただ、身体のバランスを整えるといっても整体のように外から力を加えて整えるのではありません。
身体のバランスを整えるとは「骨格の動きのバランスを整える動作を行う」ことを言います。
身体を動かすということは骨を動かすことです。
なので、動作を行うたびに身体が歪ませることになります。
逆に、身体を歪まさなければ身体を動かすことなどできないのですから、静止した状態で骨格を整えても意味がありません。
整体などで骨格を矯正してもらっても良くならないのは、そのためです。
骨格が歪むのは骨格の動きに偏りがあるからだと考えれば、そもそも身体を整えることの意味とはなんなのでしょう?
それは、重力との関係性を築き「地球の重力を有効に利用することができる身体を作る」ことです。
難しいように思われるかもしれませんが、実は、子供の頃には誰にでもできていたことなのです。
ですが、加齢とともに身体の歪みが強くなり、次第にできなくなってしまいます。
では、身体の歪みは、どのようにして作られるのでしょうか?
身体の歪みとは、人が日常生活を生きる過程で記憶される脳のプログラムが身体に反映された状態だと考えられます。
日常生活の動作を記憶することで何不自由なく生活を送ることができるのですが、その反面、それらの動作を繰り返すことで記憶と筋肉とをつなぐ神経回路が強く働き、このことが身体の歪みを大きくしています。
人は一度覚えた動作を、いつでも実行できるように筋肉に待機信号を送り続けていて、それが身体の歪みを強くする大きな要因だと考えられます。
このように考えると、加齢と共に多くの動作を記憶して、その分、身体の歪みを複雑にしていることになります。
身体の歪みが強くなってしまうと身体の傾きが強くなり、そのままだと倒れてしまいます。
そのようにならないのは、身体が傾かないように体中の筋肉が働いて身体を支えているからです。
いわば、筋肉が縮んで硬くなることで骨の代わりに身体を支えている状態です。
ですが、筋肉は本来骨を動かすためのものなので、筋肉が縮んで身体を支えてしまうと支障をきたします。
その代表的な状態が、肩こりや慢性的な腰痛などの不快な症状です。
自律神経と身体のバランス
身体のバランスを整っていると骨で身体を支えることができるので筋肉に余計な負担をかけなくて済みます。
身体のバランスを整える動作を行うメリットは、肩こりや慢性的な腰痛が改善されることだけではありません。
心の問題や病気の予防や改善にもつながります。
身体のバランスと心、病気の予防と改善、これらはまったく違うものと考えがちですが、そうではありません。
心は脳から生じていると信じている人も多いと思います。
実は、筋肉を動かしているのも脳の働きなのです。
なので、筋肉に負担をかけなければ脳や神経にも負担がかからなくなります。
心の負担は、脳や神経を働かせすぎることで自律神経の働きが乱れ、内臓の働きが弱くなることが大きな原因と考えられます。
自律神経の働きが乱れている時、交感神経が強く働き、脳や神経の働きに呼応して筋肉が過剰に緊張します。
ですので、普段より筋肉を緊張させない状態にしておくと、脳や神経の働きが高ぶっても筋肉の過緊張によって自律神経の乱れを起こしにくくなります。
筋肉を緊張させない状態を作るために必要なことが「身体のバランスを整える」ことです。
このように考えると、普段から身体のバランスを整えることのよって筋肉にかける負担が少なくしていると精神的なストレスがかかっても自律神経の働きが乱れにくくなります。
また、病気を治すためには食事が重要だという考えが強いと思いますが、このことについても自律神経の働きが大きく係わっています。
なぜ、病気の改善と予防に身体のバランスを整えることが重要なのかと言いますと、心の問題と同じく、身体のバランスを整えることで、筋肉の過緊張が防がれ、自律神経が乱れにくくなるからです。
そして、もう一つ要因として、身体のバランスが整うことで胸郭のバランスが整います。
このことが自律神経の働きにとって良い効果をもたらします。
胸郭のバランスが整うと胸郭の動きが良くなり呼吸が深くなります。
このことで胸郭と腹腔とを隔てる横隔膜の動きが良くなり腹腔内に入っている内臓に適度な刺激が与えられ内臓が活性化されて副交感神経が働きやすくなります。
副交感神経は、内臓の働きを活性化させるだけではなく、夜寝ている間に身体を修復させる働きもします。
副交感神経がしっかりと働くことで消化吸収の働きと身体の修復する働きが活発になりますので、食べたものが効率よく消化吸収されて、身体が修復され、病気の改善と予防に大きく働きます。
しかし、身体の歪みが強いままでしたら、胸郭が広がりにくく深い呼吸ができません。
なので、横隔膜を大きく動かせず内臓に刺激をうまく与えられず、結果、内臓の働きが良くならないのです。
なので、身体のバランスを整える動作を行うことが重要となるのです。
脱力と身体のバランス
また、身体のバランスを整えることで、パフォーマンスを高める効果もあります。
動作を覚えるということは、脳に動作をインプットすることですが、脳に動作をインプットするということは身体の歪みを作るということでもあります。
動作を脳にインプットするからパフォーマンスを上げることができるのですが、反面、脳にインプットすることで身体の歪みを強くしてパフォーマンスを低下させることにもなります。
動作をインプットすればするほど経験値は上がりますが、その分だけ身体の歪みも強くなります。
パフォーマンスが一時期は向上しても、ある時を境にパフォーマンスが低下したり、怪我などしやすくなるのは、身体の歪みが強くなることが原因なのです。
なぜ身体の歪みを強くなるとパフォーマンスが低下するのかと言いますと、身体を支えるために筋肉に余計な負担を強いているからです。
この時、身体の歪みによって関節の位置(アライメント)もズレが生じ、関節の働きが悪くなるのでこれによっても身体の動きが悪くなります。
身体の歪みが強い状態で身体を動かすということは、言ってみればブレーキを踏みながらアクセルを吹かすようなものです。
そのような状態で身体を動かそうとしても、イメージどおりに体が動きません。
イメージどうりに身体を動かせない状態、それがパフォーマンスの低下なのです。
ですので、パフォーマンスを向上させるためには、「身体のバランスを整えればいい」ということになります。
身体のバランスを整えることで、筋肉が効率よく働き、関節の位置(アライメント)がよくなり、骨格の動きが良くなるのでイメージどうりに身体を動かすことができるようになるからです。
このように考えると、パフォーマンスを向上させようと思うのであれば、「身体のバランスを整える」ことを行なわなければ効果が上がらないということになります。
専門的な動作をインプットしても体を動かす起点となる体幹部の動きのバランスが整わなければ、筋肉に負担をかけたまま、関節の動きが悪いままなので、インプットした通りに身体を動かすことができません。
体幹部には「身体のバランスを調整する」という重要な働きがあり、その働きによって、円滑に身体を動かすことができるのです。
新しい物事を習得するのも、身体のバランスが整った状態であれば短期間で習得できますが、身体のバランスが悪いと習得しにくくなります。
何事も姿勢が大切と言われるのは、「身体のバランスが整った状態」でなければ何事もうまく行うことができないからです。
本当に良い姿勢とは、身体のバランスが整い、筋肉に余計な負担がかかっていない状態のことで、この状態を「脱力」と言います。
脱力クリエイトは、意識的に脱力するのではなく、身体のバランスを整えることで骨で身体を支えて、筋肉に余計な負担をかけず、関節が良く動く状態を作り、結果的に「脱力できる身体」になるようなワークを取り組んでいます。
重心をコントロールする丹田
そもそも脱力とは、筋肉に余計な負担をかけていない時に感じる感覚のことです。
筋肉に余計な負担をかけない状態とは骨で身体を支えている状態のことですが、その状態を力学的な見地から考えていきたいと思います。
地球上のすべての物質には地球の引力(重力)がかかっています。
なので、地球上のすべての運動は重力が働くことを前提にしています。
人の動作も重力があることを前提として行われるのです。
ただ、下に落ちる力なので、それが動作と深い関係にないように感じると思います。
しかし、重力がなければ体が浮き上がってしまい歩くこともできなくなります。
すべての動作は、地面につけることによってはじめて行うことができるのです。
すべての物質には、外から加えられる力に抵抗する力を持っています。
その力を弾性力といいます。
硬い物質ほど弾性が強く、固体>液体>気体の順で強くなります。
この弾性の力は重力に対しても働き、重力に抵抗する弾性力のことを「垂直抗力」といいます。
垂直抗力は硬い物質ほど強く働き、人の体の中でもっとも垂直抗力が強いのが骨です。
身体を支えて、なに不自由なく動くことができるのは硬い骨があるからです。
そして、人の身体は上向きに働く骨の垂直抗力と体液の持つ下に落ちようとする二つの力を利用することができます。
人の体の約6割は水分です。
水は弾性力が小さく垂直抗力も小さいので、重力に逆らうことができずにすぐに形を変えてしまいます。
我々の身体は、水の詰まった丈夫な袋を硬い骨で支えているような構造となっています。
その袋は、形を変えることもでき、形を変えることで身体の重心をコントロールしています。
その丈夫な袋が皮膚で包まれた筋肉です。
筋肉の働きは骨を動かすことですが、その際に身体の水が移動します。
そして、身体の重心のコントロールに大きく作用しているのが、体幹部に入っている水分です。
静止して立っている時、身体の重心は仙骨の内側にあると言われています。
仙骨は後ろの中心にある体幹部を支える重要な骨で、股関節の中心に位置し身体の動きの起点となる骨でもあります。
そのまわりには横に寛骨(腸骨、座骨、恥骨)がありますが、前には身体を支える骨はなく、その中には腸などの内臓が入っていてと腹筋だけで支えています。
身体を支えとして重要な所に骨に囲まれていないということは、身体が安定して支えにくい構造と言えます。
身体を安定して支えにくい構造がゆえに、身体の歪みを起こしやすく、肩こりや腰痛、冷え性などの体の不調やぽっこりおなか、心身の緊張、身体機能の低下(老化)を起こしやすくなります。
ですが、この重心の近い場所に骨がないということは、おなかの筋肉をコントロールすることで身体の重心を自在にコントロールできるとも言えます。
例えば、水の詰まった袋をつぶすと、つぶされた方とは逆方向に水が動いて重心も動きます。
このようにおなかの筋肉を使えば、おなかの中の水分を動かし重心をコントロールすることができます。
へそ下三寸にあると言われる臍下丹田とは、骨のないおなかを巧みにコントロールするための「意識」ことだと考えられます。
ただ、ここで問題があります。
それは、普段意識している腹筋では重心をコントロールできないということです。
そのことが、数多くの誤解を生んでいる原因となっているように思います。
丹田と腹横筋
理論的には、おなかの筋肉を使えば、おなかの中の水分を動かし重心をコントロールすることができることになります。
ですが、普段意識している腹筋では重心をコントロールできないのです。
なぜかと言いますと、普段意識できる腹筋は骨を動かすための筋肉で重心をコントロールするための筋肉ではないからです。
おなかの筋肉の中で重心だけをコントロールする働きをしているのが腹横筋という体幹部のインナーマッスルです。
腹横筋は、おなかの一番内側にある筋肉で、体幹部に対して垂直に着くいて走行し、身体の動きに合わせて重心がぶれないようにコントロールすることで体幹部を支える働きをしている筋肉です。
ですが、腹横筋はインナーマッスル(体の深部の筋肉)の一つで意図的に動かすことができません。
このような筋肉を、ある人が、普通とは違う特別な感覚があることに気が付いたのが丹田であり、この感覚を意図的にコントロールしようとする試みが練丹法(丹田を作る方法)なのでしょう。
ですが、この丹田という感覚が曲者で、さまざまな誤解を呼んでいます。
丹田の感覚の正体が腹横筋の伸縮だと仮定した場合、腹横筋が働かなければ下腹部に意識を向けても丹田の感覚を得ることはできません。
なぜかと言いますと、腹横筋は体の歪みが強いと活発に働かないからです。
なので、意図的に丹田を作ろうとしても、体が歪んでいては腹横筋がうまく働かないので丹田の感覚も生まれないのです。
ただ、意図的に重心をコントロールしようと思わなくても、動作を行うたびに腹横筋が巧みに伸縮することで状況に合わせて重心をコントロールしてます。
なので、意図的に丹田を作る必要もありません。
ですが、腹横筋がうまく働かなくなると重心をコントロールする働きが悪くなるので、身体のバランスがさらに悪くなります。
身体のバランスが大きく崩れるとバランスを取るために筋肉で身体を支えなければいけません。
そして、骨格の位置が悪くなると、骨と骨とをつなぐ関節の位置(アライメント)がズレるため、関節の動きも悪くなります。
そうなると、ブレーキを踏みながらアクセルと吹かすような状態となり不効率です。
年を取った人が、ふらつきながら歩いているのは、体幹部が硬くなることで身体の重心をコントロールできなくなり、身体のバランスを取りにくくなるからです。
昔は「姿勢を良くしなさい」と言われたものですが、それは、体幹部をまっすぐにすることで腹横筋が使いやすくして重心をコントロールしやすくするための秘訣だったのです。
人生を好転させるカギ
人の動作は、体幹部の動きのバランスの良し悪しによって決まります。
例えば、腕を前に出す動作を行おうとします。
この時に、ただ腕だけを前に出してしまうと体ごと前に倒れてしまいます。
腕を前に出すと身体の重心が前に移り、体ごと前に倒れてしまいます。
ですが、腕を前に出しても体が倒れることはまずありません。
それは、倒れないように体幹部を巧みに動かすことで重心を後ろに動かしているからです。
その時に重心をコントロールするために重要な働きをしているのが腹横筋で、腹横筋を伸縮させることで内臓の位置をコントロールして、その中の体液の位置をコントロールしています。
そして、骨格で身体のバランスをコントロールしているのが背骨で、背骨をコントロールしているのが多裂筋という背骨の内側についているインナーマッスルです。
多裂筋も腹横筋と同じように、普段意識することのできない体を支える筋肉で、意図的に動かすことができない筋肉です。
なぜ背骨をコントロールする必要があるのかと言いますと、身体の重心が仙骨の前にあり、その上に腰椎(背骨の腰の部分)があります。
身体の重心は地球の重心に向かって引っ張られ、この時に一本の線が結ばれます。
この線を重心線といい、上から下に働きます。
この重心線に対して、下から上に働く線が身体の垂直抗力線です。
この身体の垂直抗力の線が通るのが、背骨のまわりなのです。
なので、背骨をコントロールするということは骨の垂直抗力をコントロールするということです。
腹横筋は、おなかをコントロールすることで重心をコントロールし、多裂筋は身体の軸となる背骨をコントロールすることで垂直抗力をコントロールすることで身体のバランスを取る働きをします。
このように、無造作に腕や脚を動かしても身体のバランスが崩れないのは、重心と垂直抗力を巧みにコントロールしているからです。
ですが、身体のバランスが大きく崩れると、腹横筋と多裂筋が使われにくくなります。
そうなると、重心と垂直抗力の力を利用できなくなるので、筋力を使う割には力が出ない上に筋肉や関節に大きな負担をかけるという悪循環に陥ります。
ですので、本質的に良い姿勢を取らなければ、身体をコントロールすることなどできないということです。
なので、気合いとか、根性とか、精神力で身体を動かそうとしても、重心や垂直抗力をコントロールできる身体でなければ、いくら精神力を高めても身体を動かすことなどできません。
精神力を活用できる身体を作ることが必要なのです。
どのようなトレーニングを行っても、優秀なコーチについて習っても、整った身体がなければ、パフォーマンスは上がりません。
良い施術者に治療をしてもらっても、良い食べ物を摂っても、身体を整えなければ良くはなりません。
どんなにありがたい言葉を聞いても、整った身体なければ腑に落ちることはありません。
なぜなのでしょうか?
それは、「重力」という生きるうえで必要な力を無視しているからです。
その力は、誰にでも与えられています。
ですが、せっかく与えられた力も使い方が悪ければ体に悪影響を及ぼしてしまいます。
そのことに気が付かずに、「これを食べていたら大丈夫だ」とか「いいお話を聞くことができた」とか、「治してもらいたい」とか、人や物から得ることばかり考えてしまうものです。
ですが、重力との関係性を築くことは自分自身だけにしかできないのです。
そして、重力の恩恵を受けるために必要なことが「身体のバランスを整える動作」を覚えるということです。
人生を好転させるカギとなるのが、地球から与えられた力、重力との関係性を築くことだと思うのです。