身体軸について

身体軸は、身体動作を行う上で基本になり得ます。

 

身体の構造から考えて軸となりうるのが、背骨です。

 

ですが、背骨自体は身体の軸にはなりえません。

 

なぜならば、背骨はまっすぐではなくS字カーブの湾曲があり、手を動かす足を動かすなどの動作を行うごとに横に側弯するからです。

 

しかし、身体の構造上、背骨がなければ身体の軸を作ることはできません。

 

では、身体の軸とは?

 

身体の軸とは、背骨そのものではなく身体にかかる重力に反発する力「骨の垂直抗力」が通るラインです。

 

「骨の垂直抗力」のラインが通るのが背骨のまわりなのです。

 

背骨のトレーニングの目的は、背骨周りに働く「身体軸」(骨の垂直抗力のライン)を作り、本来持ってる身体の機能を活性化させることです。

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本来人の身体は、立位を取る時、「骨の垂直抗力」は背骨のまわりを通るように設計させています。

 

しかし、多くの人は「骨の垂直抗力」のラインは背骨のまわりを通りません。

 

なぜならば、体の歪みによって重力に体が押し潰されてしまい、背骨の位置がズレてしまっているからです。

 

そのようになると、関節の動きが悪くなり、筋肉に負担がかかり身体動作の質が低くなってしまいます。

 

例えば、

  • 昔出来ていたことができなくなった
  • 肩が凝りやすくなった
  • 腰や腕、膝などに痛みがある

などのことは、背骨の動きが悪くなることで腕や脚、腰などの関節の動きも悪くなって一部分の筋肉に負担がかかるからです。

 

このように筋肉に負担がかかった状態では、いくら「脱力しよう」と思っていても脱力できません。

 

なので、脱力体を作るためには骨の垂直抗力が背骨のまわりに通る位置に整えることが必要です。

 

大田式調整動作®︎のエクササイズを行うことで、骨の垂直抗力のラインが背骨のまわりを通るようになり身体軸が作られます。

 

このことで、背骨に並行して着いている脊髄が圧迫されなくなり、脳神経系のネットワークが良くなり、心身にとって望ましい効果が期待できます。

身体軸によって得られる3つの効果

骨の垂直抗力のラインが背骨のまわりを通るようになれば、

 

全身にある骨の位置が整い、

 

全関節の動きが滑らかになり、

 

身体の動作の質が高めることができるようになります。

 

このことにより、

  • 身体感覚や空間認識力が高まる
  • 神経のネットワークが円滑になる
  • バランス感覚が良くなる

3つ効果がもたらされます。

身体感覚や空間認識力が高まる

骨で体を支えることができるようになることで、筋肉に余計な力を出すようにする必要がなくなります。

 

筋肉を制御している脳にかかる負担が軽減し、脳は筋出力の信号を発する代わりに、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・体性感覚(皮膚感覚、重力感覚)などの感覚信号を受信することに力を注ぐことができるようになります。

 

このことによって、身体感覚や空間認識力が高まります。

神経のネットワークが円滑になる

背骨には脳と筋肉、脳と内臓といった神経のネットワークを司る脊髄が通っています。

 

近年、脳の活性化には内臓の働きが欠かせないとも言われており、内臓の働きが良くなることで内臓と脳との神経伝達が活発になります。

 

背骨の位置が整うことで、これらのネットワークが円滑になり、結果として身体機能が全体的に高まります。

バランス感覚が良くなる

  • 身体感覚や空間認識力が高まる
  • 脊髄を通る神経のネットワークが円滑になる

ことで背骨を軸とした姿勢制御機能が高まります。

 

このことが、心理面に反映され、バランス感覚が優れてきます。

「身体軸」が作られることで、

  • 身体を支える背骨の姿勢制御機能を高める
  • 天(宇宙)と地(地球)、そして身の回りの人や環境との関係性を築きあげる
  • バランス感覚に優れた心と体を手に入れる

ことが出来るようになります。

全ての動作は、背骨を起点に行われる

人の行う動作は、すべて背骨を起点に行われます。

  • 腕を使うことも
  • 歩くことも
  • 呼吸も

うです。

 

ですが、人は背骨の動きを認識することはほとんどなく、手や足など体の末端の動きしか認識できません。

 

手や足を優先的に動かすエクササイズが多いのはそのためです。

 

体幹部を動かす数少ないエクササイズの中に、呼吸法と丹田法があります。

 

よく「呼吸法や丹田法を行うと精神が安定し、能力が上がる」と言われていますが、呼吸法を行っても、丹田を作っても実際の動作に反映させることは困難です。

 

なぜかと言いますと、体幹部といっても認識しやすいおなかを中心に行うためです。

 

おなかには骨がなく、手や足と骨によって連結されていないので構造的に全身の動作と連動させることができません。

 

呼吸法や丹田法が困難なのは、そのためです。

 

それに対して、身体軸が扱う背骨は、手や足などの末端と骨格でつながれているため、背骨を認識できるようになることで手や足などの末端の動きが反映することができます。

 

また、人の動作において力の発生源となる全身の骨の垂直抗力を認識できるようになるため、手や足に垂直抗力によって得た力を加算できるようになります。

 

これらのことが、「全ての動作は、背骨を起点に行われている」理由です。